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ローカル編集

イントロダクション

 画像の一部分を編集する機能です。RawTherapeeのローカル編集(部分的な編集)はRT-スポットと呼ばれるユニットをベースに行われます。原理は元々Nikon Capture NX2©で使われていたU-Pointのコンセプトに似たもので、その後Nikon Collection©、DxO PhotoLab©、Caputure NXD©でも使われています。RT-スポットは、この手法を元にJacques DesmisがRawTherapee専用のアルゴリズムとして開発したものです。
 RawTherapeeの手法は、GIMPやPhotoshop©などで広く知られているローカル編集のアプリケーションの手法とは全く異なります。これらアプリケーションは、基本的にブラシやレイヤー、ブレンドマスクに関連したlassoやmagic wandsなどのツールを使いますが、通常、編集に時間がかかり、複雑な形状の部分的な画像には使いづらいことがあります。
 RT-スポットは楕円形或いは長方形の境界フレームと、その中に含まれる直径の大きさが変えられる中心円で構成されています。境界フレームは4つのコントロールポイントを持ち、各ポイントを独立して動かすことも、或いは、シンメトリカルに動かすことも出来ます。長方形のフレームは画像全体を編集対象にして使うことも出来ます。RT-スポットで画像全体モードを選ぶと、コントロールポイントは自動で画像の外側に配置されます。中心円の位置はユーザーが目標に応じて手動で移動します。更に洗練されたフレーム設定を取り入れる予定です。

 RT-スポットのアルゴリズムは、ΔE(色差:与えられた2つの色の視覚的な知覚の差)をベースにした形状検出を使い、楕円形、或いは長方形の境界線で囲まれた画像の中で、編集する領域を特定します。形状検出アルゴリズムに使われる参考値は、RT-スポットの中心円の輝度、色度、色相の平均値です。つまり、RT-スポット(タイプが通常、除外、画像全体のいずれでも)の中心円の位置次第で、その参考値、及び、形状検出の作用は変化します。

 この特定操作を細かくコントロールすることで、より精密にRT-スポットの中の編集領域を特定することが出来ます。マスクを追加的に使えば、更に細かい特定が可能ですが、ローカル編集に必要な大部分は形状検出のアルゴリズムだけで十分です。また、RT-スポットは、画像の特定部分だけ作用を除外するようにも使うことが出来ます。

 利用できる編集機能は広範囲に及んでいて、画像を全体的に調整するメインの機能の殆どを備えています。もちろん、このローカル編集だけに備わった機能も幾つかあります。

 注意:メインの“設定”パネルの“特有の設定”の中の“色ずれの回避”のオプションはデフォルトで有効になっています。この場合、以下の処理はRT-スポットが有効、無効になる前に実行されます。

  •  色情報が色域内に収まるよう、比色の補正を行う。
  •  色情報の線形性、色相のずれを回避するために、LUTを使ってマンセル補正を行う。

 各機能は以下で説明するモジュールに収められています(接尾の数字は、そのモジュールがローカル編集の処理工程の何番目に位置しているのかを表しています、例:色と明るさは11番目):

色と明るさ - 11

 色、明るさ、コントラストが調整出来ます。また、赤目やセンサーに付着したゴミなどの影響による欠陥部分を補正することも出来ます。その他、階調フィルタ、トーンカーブ(L*a*b*)、ファイルの融合、マスク機能が備わっています。

シャドウ/ハイライトとトーンイコライザ - 6

 シャドウとハイライトのスライダーを使って、或いはトーンイコライザを使って、シャドウとハイライトを調整する機能です。露光補正モジュールの代わりに、或いは併用して使うことが出来ます。階調フィルタとして使うことも出来るでしょう。

自然な彩度とウォーム/クール - 5

 自然な彩度を調整する機能で、基本的なアルゴリズムはメインのカラータブにある“自然な彩度”と同じです。色の見えモデルのアルゴリズムを使って、ホワイトバランスと同等の調整を行います。

対数符号化 - 0

 対数符号化のアルゴリズムを使って、露出不足やハイダイナミックレンジの画像を調整します。

ダイナミックレンジ&露光補正 - 10

 ダイナミックレンジの調節と露光補正を行います。画像のΔEを考慮し、アーティファクトの発生を抑えるため、ラプラス‐ポアソン方程式のアルゴリズムを使います。ラプラス作用素は微細な詳細を検知することに優れています。しかし、利用にあたって、複雑なこの原理を理解する必要はありません。

共通のカラーマスク - 12

 マスクは他のモジュールにも備わっていますが、それらはそのモジュールの機能を補完するために使います。このモジュールのマスクはそれ自体が調整機能です。スコープ機能の様に、画像の表情(色、明るさ、コントラスト)や質感を変えるために使われます。

ソフトライトと独自のレティネックス - 7

 前者はメインのカラータブにあるソフトライトと全く同じ効果をもたらします。後者はレティネックスのアルゴリズムを使って、覆い焼きや焼き込みを行います。

ぼかし/質感とノイズ除去 - 1

 背景をぼかす、肌の印象を和らげる、画像をフィルム調に仕上げる、ノイズを除去する目的で使います。

トーンマッピング - 2

 メインの露光補正タブにあるトーンマッピングと同じです。但し、ローカル編集のトーンマッピングはメインのそれと併用は出来ません(メインのトーンマッピングは無効にする必要があります)。

霞除去とレティネックス - 3

 霞除去とレティネック(機能モードが“高度”の場合のみ)の機能です。霞除去や高いコントラス値のローカルコントラスト調整、“明瞭”に似た効果を得るのに便利です。

シャープニング - 9

 シャープネスの改善にRLデコンボリューションを適用します。調整が見極められるように、画像を100%に拡大します。

ローカルコントラストとウェーブレット - 8

  •  ローカルコントラスト:基本的にメインのディテールタブにある“ローカルコントラスト”と同じ働きです。
  •  ウェーブレット:メインの高度な機能タブにある“ウェーブレットのレベル”(モードは高度)と基本的に同じ機能(明瞭、コントラスト、ぼかしなど)です。“ローカル編集”では、大きな汚れや欠損などの補正に使うことも出来ます。

詳細レベルによるコントラスト調整 - 4

 センサーやレンズに付着したゴミに起因した跡などを補正するのに使います。

 各モジュールにはその機能水準(基本、標準、高度)を選択するトグルボタンが付いています。デフォルトで表示する機能水準は環境設定パネルで設定できます。

 以下に続くセクションで、ローカル編集機能の使い方を幾つか紹介します。しかし、貴方自身で機能の使い方を探りたい、と言うのであれば次のことを奨めます。環境設定パネルで、“デフォルトのローカル編集の複雑度”を“基本”に設定し、ローカル編集モジュールの先頭に表示されている、“全ての設定項目を表示”のオプションに✔があれば外します。これにより、単純化されているものの強力なローカル編集機能の使い方を初歩から学ぶことが出来ます。

 まず、“色と明るさ”、“シャドウ/ハイライトとトーンイコライザ”、“自然な彩度とウォーム/クール”機能の特性を知ることから始めましょう。手動で機能の水準モードを“標準”に上げて(コンボボックスに現在の水準が表示されます)、追加的な機能も試して下さい。“色と明るさ”のモジュールは非常に強力で、メインのカラータブにある“カラートーン調整”のL*a*b*の補正領域と、露光補正タブにあるL*a*b*調整のカーブの両方の機能を持っています。

単一RT-スポットで複数の機能を使う時の注意

 ローカル編集の殆どの機能は同じRT-スポットの中で使うことが出来ますが、対数符号化とトーンマッピング、レティネックスの3つを同じスポットで使うことは避けることを奨めます。プレビュー画像が、TIFF或いはJPEGの出力画像とは一致しないことがあるからです。特に、拡大ツールを使ってプレビュー画像を大きくしている場合にそうなることがあります。

 上記3つの機能の何れかを他のローカル編集機能(例えば、色と明るさ)と一緒に使う場合は、この様な問題は起こりません。

 3つの機能を組み合わせて使いたい場合は、同じRT-スポットではなく、別なRT-スポットを追加して、それを初めのRT-スポットの傍に配置して使います。

 例えば、初めのRT-スポットで対数符号化を使い、2つ目のRT-スポットでトーンマッピング或いはレティネックスを使います。上記3つの機能以外であれば、1つ目、或いは2つ目のRT-スポットに追加して使います。

実例を使った基本操作の説明

 注意:以下の説明で使われているスクリーンショットは、プログラムの開発に沿って更新されることがあります。そのため、解説文と必ずしも一致しないことがあります。

ローカル編集機能を有効にする

  •  画面右上の一連のタブから手の形のアイコンが表示されているタブ(ローカル編集)を選びます。
  •  (機能がまだ有効になっていない場合は)“ローカル編集”と表示されたタイトルをクリックし、機能パネルを“拡張”します。
  •  “追加/作成”をクリックします。
    ローカル編集直前の画像

準備

 RT-スポットを目的に応じて配置します。花の色以外に影響を与えずに、花の色の色度を増やし、輝度(明度)を下げることを目的にした手順を例にして説明します。

  •  RT-スポットの中心円(編集のための参考値となる部分)を、調整目的を代表している個所に移動します。本例で言えば、色度と明度を変えたい花のレッドの部分です。
  •  4つの境界線を使って、花の周辺を大きく囲むようにRT-スポットを広げます。マウスをコントロールポイント(4つ)に合わせウスを押したままポイントを左右上下に移動して、RT-スポットの大きさ(編集領域)を調整します。
  • プレビュー画像のツールバーにある“ロック式カラーピッカー”を使って、花びらのレッド、空のブルー、葉のグリーンの 3カ所のL*a*b*情報を表示させます。Shiftキーを押しながら表示されたカラーピッカーを左クリックすると色情報の種類が、RGB、L*a*b*、HVSの順に変わります。
  •  これら3点のL* a*b*情報は以下の様になっています:
    •  花びらのレッド: L=48.6 a=74.4 b=47.0
    •  空のブルー: L=68.6 a=-3.1 b=-16.6
    •  葉のグリーン: L=48.3 a=-28.3 b=51.4
編集前の下準備

Rawファイルへのリンク(Jacques Desmis - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [1]

色と明るさの機能を追加

 “設定”パネルの最下段にある、“現在のスポットに機能を追加”というコンボボックスから、現在のRT-スポットで使う機能を指定します。

  •  一覧の中には、“色と明るさ‐11”、”対数符号化‐0“など12個の機能があります。各RT-スポットで、1つ或いは複数の機能を使うことが出来ます。機能名の後に付いている数字は、処理工程の順番です。つまり、”対数符号化-0“が処理工程の一番前に位置し、”色と明るさ(不良部分の修正)-11“が最後です。機能に付随するマスクによる処理も同じです。
  •  一覧の中から“色と明るさ-11”を選択します“
    色と明るさ機能を追加した様子

輝度(明度)と色度の調整

 スライダーを使って明度を-70、色度を130に調節します。

 その結果、花の色だけが変わりました: 花のL* a*b*の値がL=41.0 a=65.6 b=52.8に変わりましたが、空のブルー、葉のグリーンのL* a*b*の値に変化はありません。

    色と明るさの調整後の画像

カラー機能のスコープと境界値の役割

 これら2つの役割は、前者が色情報の違いをベースに、後者がRT-スポットの中心円からフレームまでの距離をベースに、調整範囲をコントロールすることです。2つを組み合わせることで、より細かく編集範囲を定めることが出来ます。

  •  設定の中の"カラー機能のスコープ“のスライダーを動かして画像の変化を見ます:
    •  RT-スポット内の画像では、参考値である中心円部分のピクセルとその他の部分のピクセルの色情報の違いを表すΔEが計算されます。違いが小さければ低いΔE、大きければ高いΔEになります。カラー機能のスコープは、このΔEの範囲の中で、調整の働く範囲と働かない範囲を調節するスライダーです。違いが無い部分からスコープで設定された違いが小さい部分までは調整が100%働き、そこから一定の違いがある部分までは調整効果が漸進的に減衰し(減衰のペースはΔEの減衰スライダーで調節します)、それより違いの大きい残りの部分では調整が働きません。
    •  デフォルトは30に設定されています。この設定値で概ね花のレッド全体に調整が働きますが(本例では、色度を上げ、明度を下げる)、色情報の違いが大きい(ΔEが高い)空のブルーや葉のグリーンは調整が働かず明度や色度は変化しません。
    •  しかし、カラー機能のスコープ値を下げていくと、ΔEが低い部分でも調整効果に差が出てきます(レッドの一部だけに調整が100%働く)。逆に、値を上げていくと色情報の違いが無視されるようになり、調整が働く部分が増えてきます。80~100になると空のブルーや葉のグリーンの色度と明度も変化します。

 次に、境界値の役割を解説します。カラー機能のスコープの値を100にして、設定の“全ての設定項目を表示”オプションを有効にします。

  •  “境界の階調調整”という機能名のパネルを拡張し、その中の境界値を上げ下げして変化の違いを見ます。
    •  このスライダーは、中心円からRT-スポットのフレームに向かってどこまでを調整範囲とするか設定するものです。設定値は中心円からフレームまでの距離の割合を意味します。
    •  低い値にするほど、調整範囲が中心円付近だけに限られます。一方、高い値にすると調整範囲が広がり、100ではRT-スポット全体が調整範囲となります。
    •  中心円から設定された境界値までは調整が100%働き、境界値からフレームまでは調整が漸進的に減衰(減衰のペースは境界値の減衰スライダーで調節します)。

調整が適用される部分の確認 ΔEのプレビュー

 “カラー機能のスコープ”で定められた調整の作用が及ぶ部分を予めプレビュー画面で確認出来ます。但し、調整の程度や作用が100%働く境界の位置は確認出来ません(これらの確認は次の“調整の効果を見る”で説明されています)。RT-スポットに追加した機能の個数によって手順が2つに分かれます:

  •  現在のRT-スポットに追加された色に関する機能が一つだけの場合(例、“色と明るさ”の機能だけ):“設定”に付属している“ΔEのプレビュー”ボタンを使います。
  •  RT-スポットに追加された機能が複数の場合(例、“色と明るさ”と“露光補正”):プレビューで確認したい効果に関係する方の機能(例、色と明るさ)の中にある“マスクと調節”パネルを拡張し、コンボボックスの中にある“ΔEのプレビュー”を使います(但し、機能水準が標準或いは高度の場合だけ)。そうすれば、確認の必要がない方の効果(例、露光補正)はプレビューに反映されません。露光補正の効果を表示させたい場合は、露光補正機能の中の”ΔEのプレビュー“を使います。

 設定の中の“形状検出”パネルの中の“ΔEのプレビューカラー‐強さ”を調整して、表示色とその濃さを変えることが出来ます。

    調整領域をΔEのプレビューで確認

調整の効果を見る

 調整で変化した部分を見るためには:

  •  モジュール(本例の場合は“色と明るさ”)の一番下に表示されている“マスクと修正領域”を開き(注意:機能の水準を“標準”或いは“高度”にしないと表示されません)、コンボボックスの中から“修正された領域をマスクなしで表示”を選択します。
  •  このオプションにより、画像の質感や構造だけでなく、輝度、コントラスト、色度などに対して行われた調整により変化した部分を知ることが出来ます。
  •  境界の階調調整の調整(境界値、境界値の減衰、境界の差異XY)により変化した部分も見ることが出来ます: 
  •  “カラー機能のスコープ ”のスライダー調整により変化した部分も見ることが出来ます。上記2.5で説明したように、このスライダーはΔEに作用します。
    マスク機能を使って調整で変化した部分を確認

ローカル編集で画像全体を調整

 ローカル編集の利用は画像の一部の編集だけに限られるわけではありません。画像全体を処理することも出来ます。

  •  “スポットのタイプ”で “画像全体”を選択すると、画像全体を囲うフレームが自動で設定されます。中心円の位置や大きさは、目標とする調整に応じて調節します。注意:選択時に設定されるフレームは大きいため、プレビュー画像を縮小(12%以下)しない限り、フレームの位置は見えません。
  •  画像全体を編集対象とするため、“境界の階調調整”パネルの中にある境界値のスライダーは自動的に100に変わります(他のタイプの場合は60をデフォルトで設定)。
    画像全体を作業領域にするRT-スポットのセッティング

葉の色を変える、その後一枚の葉だけを除外する

葉の色を変える

  •  “カラー補正グリッド”でL*a*b*の補色次元a*とb*を変えます。“直接”を選択し、“強さ”の値を高くします。そして、グリッド上の点(黒と白)を実例の様に移動すると、全ての葉の色が変わります。
  •  必要であれば、“カラー機能のスコープ”を調整します。
  •  空の色や花の色は異なるので変化しません。
    葉の色を変えた

その後、一枚の葉の色だけを元のグリーンに戻す

  •  2つ目のRT-スポットを追加します(“設定”モジュールの“作成/追加”をクリックします)。
  •  RT-スポットのタイプを“除外スポット”に変えます。
  •  そのRT-スポットの中心を目標とする葉の色(色を戻したい葉)の部分に移動します。葉の大きさを十分カバーするようにRT-スポットの境界を拡大します。
  •  “除外”のパネルの中の“スコープ”を目標とする効果が得られるように調節します。
  •  “除外スポット”は通常のスポットとして使うことも可能です。他の機能を追加して使います(本例の場合、色と明るさ以外の、ノイズ除去、ぼかしなどの機能)。つまり除外スポットは他のRT-スポットで調整した効果を部分的に無効にするだけなので、他の機能の調整であれば追加することが出来ます。
    除外スポットを使って一枚の色だけ元に戻す

赤目の修正とセンサーに起因する欠陥を取り除く

 赤目の修正手順は、準備、RT-スポットの調節、赤目を除く、の3段階からなります。

準備

  •  目の周りを十分な大きさのRT-スポットで囲みます。
  •  RT-スポットの中心を赤くなった目(瞳)に合わせます。
  •  “ロック式カラーピッカー”を調整によって色の変化が予想される4カ所に配置します。
    赤目補正の下準備

RT-スポットの調整

  •  “色と明るさ”機能を追加します。
  •  “設定”にある“ΔEのプレビュー”ボタンを押します(作用の及ぶ部分がグリーンで表示されます)。
  •  RT-スポットを目標とする補正が行えるように調整します:
    •  RT-スポットの中心円の大きさを14にしました。
    •  カラー機能のスコープを18にしました。
    ΔEのプレビューを参考に補正部分を正確に決める

赤色を除く作業

  •  “色と明るさ”機能の色度のスライダーを-100にします。
  •  結果を確認します :
    •  瞳の主体色がなくなりました。
    •  虹彩、角膜、肌の色に変化はありません。
    •  結果の状況に応じて多少の調整が必要かもしれません。例えば、赤目の外側でも色が褪せるようであれば、“境界値”を低く、或いは、“境界値の減衰”を高くします。
    赤目補正の結果

レンズに付着したゴミやセンサーの欠損などに起因する不良部分の補正

 レンズに付着したゴミやセンサーの欠損などに起因する不良部分の補正も、赤目の補正と同じ原理で処理します。但し、本例では“色と明るさ”ではなく、別の機能を使った補正を紹介します。

  •  “ローカルコントラスト&ウェーブレット”(機能水準は高度)の“Ψウェーブレットピラミッド2のレベルによるコントラスト調整”、或いはCBDL (詳細レベルによるコントラスト調整)を使います。
  •  両方法とも、番手の低いレベルのコントラストを下げることで目的を果たします。
  •  必要であればレベルのぼかし(Ψウェーブレットピラミッド1)を使うことも出来ます。
  •  “境界値”を低く(20以下)、“境界値の減衰”は高く(15以上)設定します。
  •  但し、ΨウェーブレットピラミッドやCBDLの機能を使う場合は、RT-スポットの大きさが最低でも32x32ピクセル以上ないと適切に作用しないので、欠陥の大きさがRT-スポットに比べて非常に小さい時は、境界値やΔEを使って対処します。

 ここでは、複数の汚れ跡をΨウェーブレットピラミッド2で処理します。

  •  次のスクリーンショットを見て下さい。幾つか小さな染みが目立ちます。
    複数の汚れ跡がある画像
  •  RT-スポットに“ローカルコントラスト&ウェーブレット”の機能を追加します。
  •  機能水準のモードを“高度”にし、コンボボックスの中から“Ψウェーブレット”を選びます。
  •  スコープは20にセットします。
  •  “Ψピラミッド2 レベルによるコントラスト調整-トーンマピング‐方向によるコントラスト”のパネルを拡張し、“レベルによるコントラスト調整”に✔を入れます。
  •  “減衰応答”、“オフセット”、“色度のレベル”(場合によっては)で高い値を設定します。
  •  “レベルによるコントラスト調整”カーブを使って、番手の低い詳細レベルのコントラストを下げます。
    補正後、汚れ跡が減少

覆い焼きと焼き込み

 ポートレート写真など、光が肌に直接当たっている写真では、コントラストが過度に強くなってしまう不快な現象が起きることがあります。肌の一部分が露出過多になる一方で、他の部分が露出不足になるケースです。

  •  一般的に、この問題はマスクとレイヤーを使って補正されています。GIMPやPhotoshop©を使ったこの補正のチュートリアルは沢山あります。RawTherapeeのユーザーはローカル編集に備わっているマスクを使って類似の編集が可能ですが、本例では:
  •  “独自のレティネックス” (Ipolの研究成果を応用)を使った補正を紹介します。レティネックスは1970年代に生まれた概念で、従来は異なる分野のアプリケーションとして使われていますが、RawTherapeeはそれを応用しました。以下の様に使います:
    •  しきい値と共に一つ或いは複数のラプラス変換(注釈を参照)を使う。
    •  ポアソン方程式(PDE 偏微分方程式)の解を求める。
    •  輝度のバランスを図る。

 注釈:ラプラス作用素は小さなディテールの検知に優れています。ラプラス変換により作られる偏微分方程式を解くことで、機能として使えるようになります。しかし、“独自のレティネックス”機能を使う上で、これら複雑な数学を理解しなければならないということはありません。

準備

  •  ΔEや“スコープ”(“独自のレティネックス”の中にあるスコープ)、境界値の設定の要領はこれまでの例と変わりません。
  •  ポートレートを例題に使います。但し、肖像権の問題を避けるために、目を隠しています。
  •  “現在のスポットに機能を追加”で“ソフトライト&独自のレティネックス”を選びます。機能の水準は“高度”、コンボボックスの中から“独自のレティネックス”を選択します。 
    下準備

ラプラス変換の設定と調節の概要

  •  “強さ”のスライダーを調節します(1次ラプラス作用素のしきい値を考慮します)。
  •  “ΔEのラプラシアンしきい値”スライダーを調節します(2次ラプラス作用素に作用するための画像のΔEを考慮します)。この処理はスコープのアルゴリズムのアップストリームに位置し、背景との違いを考慮することが出来ます。
  •  “フーリエの処理を表示”のコンボボックスの中から“マスクなしで変更を表示”を選び、変更をプレビューで確認します。
    表示の方法を変える

結果

 似たようなアルゴリズムが、“ダイナミックレンジ&露光補正”の中で使われています。露出に大きな違いがある画像(全体的に露出不足の場合が多い)の補正に使うことが出来ます。

    補正の結果を確認

輝度、色度、色相をベースに階調フィルタを施す

準備

  •  “ロック式カラーピッカー”を7つの観測点に配置します。
  •  “色と明るさ”の機能を追加し、機能水準を“高度”にします。
    下準備

    Rawファイルへのリンク(Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [2]

諧調フィルタを施す

任意に以下の設定をしました。

  •  輝度の階調の強さ: -0.44
  •  色度の階調の強さ:1.13
  •  色相の階調の強さ : 2.69
  •  階調フィルタの角度 : -87.6
  •  カラー機能のスコープ = 30
  •  “設定”のフェザー処理 = 25
    輝度、色度、色相の階調を調整

デフォルトの設定を変えてみる

  •  カラー機能のスコープの値を、70、75、80、85、90、100と少しずつ変えてみて下さい。
  •  フェザー処理の値も変えてみます。
  •  階調フィルタの値(L,C,H、フィルタの角度)も変えてみて下さい
  •  また、“色と明るさ”の機能の値も変えてみます。
    境界、階調、輝度、色度、色相、スコープ、フェザーの調整

露光を変えてシャドウを明るくする5つの方法

 以下の説明は露光を変える方法を幾つか(これらだけに限られません)示したものです。

  •  編集が難しい画像です。非常に暗いシャドウの中心にほぼ露出過多になっている部分があります。
  •  以下の機能を使う5つの方法を示しますが、順番による優劣はありません。括弧内は機能が帰属しているモジュール名です。
    •  シャドウ/ハイライト(シャドウ/ハイライト&トーンイコライザモジュール)
    •  トーンイコライザ(シャドウ/ハイライト&トーンイコライザモジュール)
    •  TRC(シャドウ/ハイライト&トーンイコライザモジュール)
    •  対数符号化(対数符号化モジュール)
    •  ダイナミックレンジ圧縮と露光補正の機能(ダイナミックレンジ圧縮と露光補正モジュール)

 他にも以下の様な調整法が考えられます :

  •  コントラストカーブ使う
  •  “色と明るさ”の明るさのスライダーを使う
  •  輝度の階調フィルタを調整する

準備

  •  以下のスクリーンショットのようにRT-スポットを作成/追加します。
  •  “カラー機能のスコープ”スライダーを50にセットします(“シャドウ/ハイライト”の機能を使う場合は“カラー機能のスコープ”を使いますが、“対数符号化”と“露光補正”機能を使う場合は、それらのモジュールに付属している“スコープ”を使います)。
  •  5つの調整方法を試す際には、スコープの値を20や100に変えて効果の違いを見て下さい。
    シャドウを明るくするための下準備

    Rawファイルへのリンク(RawTherapee - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [3]

シャドウ/ハイライトを使う

 "シャドウ/ハイライト&トーンイコライザ"の機能をRT-スポットに追加します。機能水準は“標準”です。

  •  機能タイトル下のコンボボックスから“シャドウ/ハイライト”を選択します(デフォルトは“イコライザ”になっています)。
  •  “シャドウ”や"シャドウトーンの幅“を調節してみます。
    シャドウ/ハイライトを使ってシャドウを明るくする

トーンイコライザを使う

 上記と同じ機能で、今度は:

  •  コンボボックスから“イコライザ”を選択します。
  •  スライダー2,3,4を変えてみます。
    トーンイコライザを使ってシャドウを明るくする

TRCを使う

 更に、上記と同じ機能で、今度は:

  •  スライダーの下にあるTRC(トーンレスポンスカーブ)を使います。
  •  "スロープ"を150に上げて、変化を見て下さい。
  •  ガンマを上下させて違いを見て下さい。
    TRCを使ってシャドウを明るくする

対数符号化を使う

 "対数符号化"機能を追加します。

  •  “対数符号化”の中にある“スコープ”を変えてみます、例えば50
  •  "自動"ボタンを押してみます。
  •  "グレーポイントの目標"を変えてみます。
    対数符号化を使ってシャドウを明るくする

露光補正を使う

 "ダイナミックレンジ&露光補正"機能を追加します。

  •  機能水準は“標準”です。
  •  “露光量補正ƒ”(ラプラス変換とフーリエ変換を適用します)を調整します。
  •  “露光補正の機能”パネルを拡張し、黒レベルを-1150、シャドウを50に設定します。
  •  “ハイライト圧縮”はデフォルトでは20に設定されていますが、これを変えて変化を見ます。
  •  他の設定値も変えてみます。
    露光補正を使ってシャドウを明るくする

特定の画像に推奨される方法

 カラーコントラストの少ないポートレートやその他の画像の場合:

  •  このモジュールの“露光補正”スライダーは注意しながら使います。この露光補正はメインの露光補正のアルゴリズムに近いものですが、肌の様に色の変化が少ない画像に対する働きがまだ良くありません。この問題はラプラス作用素の追加で改善しましたが、まだ改良出来ると思います。
  •  代わりにトーンイコライザ或いは“TRC”を使ってみます。

 こういった画像に露光補正を使う場合は、設定メニューの“形状検出”の変数を変えてみることを奨めます。

  •  “ΔE スコープのしきい値”を増やします。
  •  ΔEの減衰を下げます。
  •  ΔEのバランス ab-Lを調整します。
  •  必要に応じてカラー機能のスコープを調整します。

ハイダイナミックレンジ画像の処理-ダイナミックレンジ&露光補正モジュールの対数符号化、或いはPDEアルゴリズムを使う

対数符号化と色の見えモデルのチュートリアル

CIE色の見えモデルの項を参照

色順応の使い方

 まず、カラータブの中の“ホワイトバランス”機能で“自動”の中の“色温度の相関関係”を選択します。これで、数学的にほぼ完全なホワイトバランスが得られます。

    色温度の相関関係を使ったホワイトバランス

    Rawファイルへのリンク(RawTherapee - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [4]

適切な“ローカル編集”の設定 – 下準備
  •  RT-スポットを作成/追加し、スポットのタイプは“画像全体”を選びます。
  •  スクリーンショットの様にロック式カラーピッカーを配置します
    色順応を使う下準備
対数符号化を選択

 “現在のスポットに機能を追加”で“対数符号化”を選択します。

    色順応 – 対数符号化
  •  RT-スポットの中心を移動してみます 
  •  “スコープ”の値を40、60、80、100に変えてみます
  •  結果を見極めます
  •  画像はまだ黄色味を帯びています
色順応を調節 - cat16(色順応変換16)
    色順応 – 対数符号化 - Cat02
  •  “色順応Cat16”のスライダーを左に動かすと画像の印象が冷たくなります。
  •  スライダーを10ポイント減らす(左)ことは、色温度を300K下げることに相当します。
  •  試しに23まで下げてみます。
ハイダイナミックレンジ画像 + 色の見えモデル

 本例の画像の編集は簡単ではありません(高度な機能のタブの色の見えモデルで使われている画像と同じです)。濃い影の中に、強い逆光が射しています。RawTherapeeのデフォルト設定を使い、ロック式カラーピッカーを本例の様に置き、処理による画像の変化が分かるようにします。

    色の見えモデルによる編集の準備

    Rawファイルへのリンク(Pixls.us - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [5]

対数符号化と色の見えモデルを使う

 “現在のスポットに機能を追加”で“対数符号化”を選択します。以下の様に本例に任意な設定を行い、元画像と比較します:

  •  RT-スポットを作成/追加し、スポットのタイプは“画像全体”を選びます。
  •  “スコープ”(対数符号化のモジュールの中にあるスコープ)を79にします。
  •  “機能水準”を“高度”にします。
  •  “自動”ボタンを押します。
    対数符号化
  •  RT-スポットを動かして効果の違いを見ます。
  •  スコープを変えて効果の違いを見ます。
対数符号化の中の色の見えモデルの設定を変える
  •  “画像条件”の“周囲環境”を“薄暗い”に変えます。画像が少し明るくなるはずです。
  •  “画像の調整”の中の、彩度(S)を30、コントラスト(J)を-10にします。
  •  シャドウの変化を確認します。
    対数符号化 + 色の見えモデルの彩度(S) - コントラスト (J) – 薄暗い

 更に、“すべて”を選んで:

  •  彩度(S)の代わりに鮮やかさ(M)を使ってみます。
  •  コントラスト(J)の代わりにコントラスト(Q)を使ってみます。
  •  明るさを変えてみます。
対数符号化 – 覆い焼きと焼き込み – 色の見えモデル
準備

 これは対数符号化と色の見えモデルを使った別な覆い焼きと焼き込みの方法です。RT-スポットを顔の部分に持って行き、ロック式カラーピッカーを例の様に配置します。

    対数符号化を使った覆い焼きと焼き込み - 準備

    Rawフィルへのリンク(Copyright - Jean Christophe Frisch - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [6]

手動モードで対数符号化を色の見えモデルと合わせて使う
  •  “現在のスポットに機能を追加”で“対数符号化”を選択します。
  •  機能水準は“高度”を使います。
  •  “自動”ボタンを押します。
  •  求める効果になるまでホワイトEvを少し上げます(本例では3.0から5.0に上げています)。
  •  彩度(S)を少し上げます。
  •  “すべて”をクリックし、明るさ(Q)を少し減らします。
  •  周囲環境を変えてみます。
  •  スコープの値を変えたり、RT-スポットの位置を変えたりしてみます。
    対数符号化を使った覆い焼きと焼き込み
     

その他の例

 ハイダイナミックレンジ画像は、画像処理の中で繰り返し出てくる問題です。既にRawTherapeeにはダイナミックレンジを狭めるアルゴリズムが幾つか(ダイナミックレンジ圧縮、シャドウ/ハイライト、トーンイコライザ、TRCなど)用意されていて、ある程度問題の解決に至っています。

  •  本例では、J.DesmisによってRawTherapeeのローカル編集に組み入れた“対数符号化”(Darktableのフィルミックモジュールから派生した機能で、A.GriggioのARTにも採用されています)を使います。
  •  本例では、“対数符号化”モジュールの能力を示すため、設定の中の“階調フィルタ”を使わずに、このモジュールを使って輝度の階調を変えます。

準備

  •  RT-スポットを以下の様にセットします:
    •  RT-スポットの中心をスクリーンショットに示したように画像の左下に置きます。
    •  RT-スポットの右辺上が画像の境界に来るようにセットします。
  •  “対数符号化”を追加します。機能の効果を示すため、スクリーンショットは敢えて機能を無効にしています(デフォルトでは機能を追加した際に有効になります)。
    準備

    Rawファイルへのリンク [7]

自動設定

  •  “自動”ボタンを押します(自動調節なのでスライダーがグレーアウトします)。
  •  画像が明るくなります。
  •  自動ボタンをもう一度押すとスライダーが手動で調節できるようになります。
  •  ブラックEv=-6.7、ホワイトEv=6.9という結果は、この画像のダイナミックレンジがEv=13.6の幅を持つことを示しています。
  •  ソースとなるグレーポイントの値は(自動で設定されます) は1.2です。
  •  これらの設定はモジュールの処理工程のアップストリームで自動的に計算されたものです(手動で変えることも出来ます)。
    自動設定

調節

 画像を自分の好みに調節します、例えば:

  •  “設定”にある“境界の階調調整”の、境界値を45にします。必要に応じて、“境界値の減衰”や“境界の差異 XY”を調整します。
  •  画像に対する作用の配分を調節します。対数符号化に属しているスコープを50設定します。
  •  観視条件の“グレーポイントの目標”スライダーを22に設定し、画像全体の輝度を変えます。
    階調を変える

ダイナミックレンジ&露光補正を使った別な方法

 “ダイナミックレンジ&露光補正”を使います。“コントラストの減衰”と“ダイナミックレンジ圧縮”で使われている2つのPDEアルゴリズムを組み合わせて使います。両方のパネルを拡張します:

  •  コントラストの減衰(スクリーンショットに表示されている数値を設定します):ラプラシアンのしきい値=75.6、線形性=0.61、ラプラシアンのバランス=1.32、ガンマ=1.4
  •  ダイナミックレンジ圧縮(スクリーンショットに表示されている数値を設定します):量=65、ディテール=-19、シグマ=1.48、オフセット=2.29
  •  付属のスコープ=82
    PDE Ipol-ダイナミックレンジ圧縮

対数符号化とハイライト復元

 “対数符号化”を使うと、時折、予想外に悪い結果になることがあります。撮影時条件によって露出過多になってしまったハイライト部分がある場合、そのハイライト部分を復元する必要がありますが、対数符号化を適用した時に、復元したハイライトが“上書き”されてしまい、不快な結果(例、輝度や色相、彩度が予想外に変わってしまう)をもたらすことがあります。2つの方法を使って、これら復元したハイライト部分を保護します:

  •  マスクと復元処理を使う方法
  •  “除外スポット”を使う方法

準備

Rawファイルへのリンク (Pixls.us Jonathan Dumaine - Creative Common Attribution-share Alike 4.0): [8]

pp3へのリンク [9]

基本的な設定

  •  ホワイトバランスの補正(カラータブ):撮影者以外、撮影時の条件(背景の光の種類;LED?蛍光灯?前景に当たっている光の種類)は分からないので:
    •  カメラのホワイトバランスをそのまま使う
    •  或いは、自動の中の“色温度の相関関係”を使う
  •  “ハイライト復元”の方法:本例ではEmil Martinecが設計した優れた方法、“色の波及”を使っています。

RT-スポットの準備

  •  RT-スポットを作成/追加し、スポットのタイプは“画像全体”を選びます。
  •  “ロック式カラーピッカー”をスクリーンショットの様に配置します。
  •  メインの“設定”にある"マスクと融合に関する設定"の中の“輝度とカラーマスクの背景色”スライダーを0にします。
    準備

対数符号化を適用

  •  現在のスポットに機能を追加で“対数符号化”を追加します。
  •  機能の水準モードは“高度”(或いは標準)を選択します。
  •  “自動”ボタンを押します。
  •  対数符号化モジュールの“スコープ”値を80以上にします。

 “対数符号化”により前景(被写体)を中心に調整が自動的に行われましたが、“復元”した背景のハイライト部分の色が褪せて、明るさが減りました。

 更に、全体的な彩度が強くなり過ぎて、露光の配分も不適切になっています。

    対数符号化

マスクを作る

 RawTherapeeで一般的に使われるマスクとは異なるマスクを作ります。マスクを“存続したまま”使って、“対数符号化”を適用していない画像と、適用した画像を融合します。

 “輝度マスクをベースにした復元”の設定に応じて:

  •  マスクの暗い部分では、融合した画像のその部分は限りなく元画像に近くなります。
  •  マスクの非常に明るいでは、融合した画像のその部分は限りなく元画像に近くなります。
  •  上記2つの部分以外で、“対数符号化”の調整が働きます。

 本例では、LC(H)カーブを使っていますが、他の画像ではL(L)カーブを使う必要があるでしょう。注意:C(C)カーブは融合の効果がありませんが、領域選定の質を向上するのには使えます。

    マスク

マスクを使ってハイライトを部分的に復元

  •  “マスクを有効にする”チェックボックスに✔を入れます。
  •  “輝度マスクをベースにした復元”のパネルを拡張します。
  •  “復元のしきい値”の設定:設定値を2に近づけるほど、マスクの暗い、或いは非常に明るい部分の広範囲が考慮され、元画像に近い輝度を復元します。
  •  “暗い領域の輝度のしきい値”と“明るい領域の輝度のしきい値”スライダーを使って、効果が及ぶ領域を増やしたり減らしたりします。
    ハイライ復元

“除外スポット”を使ってハイライトを復元

 “ローカル編集”の特筆すべき機能、“除外スポット”を使ってハイライト復元を行います。調整の加減は任意です。

    除外スポット

CIECAM16を使って最終調整

 露光補正タブのハイライトの復元方式“色の波及”と“ローカル編集”タブを使った調整の後、CIECAM16を使った仕上げを紹介します。

  •  コントラストを増やします。
  •  彩度を下げます、特に肌色の。
  •  画像の印象を少し冷たくするために色順応を調整します。

 もちろん、人によって感じ方は違うので、設定値は任意です。

最終的な留意点:

  •  ハイライト部分は復元出来ましたが、ノイズが多い画像なので、更にノイズ低減を使って仕上げを行う必要があるでしょう。しかし、この項の説明趣旨とは外れるので手順は省きます。
    CIECAM16

霞除去-レティネックス

 本例では、霞が強くかかった風景画像を処理します。初めにメインの“ディテールタブ”にある“霞除去”を使って補正し、その後、ローカル編集の霞除去-レティネックスで更に空と水平線の部分を補正します。

元画像

    霞のかかった画像

    Rawファイルのリンク(Pixls.us - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [10]

霞除去(メインのディテールタブに付属する霞除去)による処理

 初めから、ローカル編集の“霞除去”を使っても補正が出来ますが、画像をよく見ると、背景と丘陵部分の霞がより強いので、2段階で補正する方がいいでしょう。

    霞のかかった画像 – メインメニューの霞除去による補正結果

ローカル編集のレティネックスを使った補正

  •  “霞除去-レティネックス”を追加します。機能水準のモードは“高度”にします。
  •  備わっている機能の設定を色々変えてみます。
  •  必要に応じて“透過マップ”を開き、カーブの右側を下げます。
  •  調整の結果を見極めます。遠景の霞が軽減されました。
    霞のかかった画像 – 霞除去+レティネックスで補正

ノイズ除去の使い方

 使い方は幾つかあります、例えば:

  •  初めにディテールタブのメインの“ノイズ低減”を使ってノイズ除去を行い、引き続き特定の部分をローカル編集のノイズ除去を使ってファインチューニングします。この場合、ディテールタブの“ノイズ低減”によるノイズ除去は必要最小限に留めます。
  •  画像全体のノイズ除去を“ローカル編集の”ノイズ除去“で行い、その後、ノイズを除去したくない部分に”除外スポット“を使ってノイズ除去を無効にします。
  •  ノイズの少ない画像の場合、ローカル編集のノイズ除去だけを使って特定部分のノイズだけを除去します。
  •  創作的な意図で、ローカル編集のノイズ除去で一部のノイズを除去し、その他の部分のノイズをそのままにします。

 ここでは4番目のノイズ除去を説明します。下の少女のポートレート画像はノイズが多く、特に強い色ノイズが見られます。

    ノイズ除去の準備

    Rawファイルへのリンク(Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [11]

100%に拡大

    画像を100%に拡大

どの様な設定を行うか

  •  RT-スポットの中心円の位置とその大きさが重要です:色ノイズが特に激しい部分に中心円を合わせて、そのサイズを大きめにします。
  •  スコープの設定も重要です :本例の場合、色ノイズがカラースペクトラム全体(レッド、グリーン、ブルー、イエロー)に渡っているので、高いスコープの値(本例では90)が必要です。一方、輝度ノイズだけの処理で十分な画像の場合は、色の違いだけで作用に差をつけるだけなので、スコープ値は通常の30で十分です。
  •  ローカル編集のノイズ除去機能は、メインのノイズ低減モジュールとは異なる点が幾つかあります:
    •  詳細レベルの番手に応じて(カーブの横軸の位置次第で、0~6まで)、輝度ノイズ除去の程度を、カーブを使って変えることが出来ます。
    •  詳細レベルの番手に応じてノイズ除去の作用に差をつける:例えば番手が3以上でカーブが縦軸の20%以上にある場合は、輝度ノイズの除去が積極的になります。
    •  輝度で見た暗い部分と明るい部分で作用に差を付けるためには、“ガンマ”ではなく“イコライザ”を使います。
    •  “低い番手の色ノイズ”(詳細レベル0~4の、インパルスノイズや低色ノイズ)と“高い番手の色ノイズ”(詳細レベル5や6のパケットノイズ、ブロッチノイズ)に対する作用に差をつけることが出来ます。
    •  “レッド/グリーン”、“ブルー/イエロー”のイコライザはノイズの少ない画像のノイズ除去に便利です。
    •  DCT(離散コサイン変換)を使った、“色の詳細を回復”スライダーが追加されています。
    •  エッジ(“形状検出”)に応じて作用に差をつける、“輝度と色の詳細のしきい値(DCT)”スライダーがあります。
    ノイズ除去の設定

ノイズ低減の複雑な問題:画像の構造が均質な部分と、そうでない部分との間で、どの様に作用に差を付けるか?

 被写体(前景)と背景を分けて扱うことは、写真の世界ではよくある問題です。被写体とは動物や、建物、人物、背景は空や芝生、森、壁などのことですが、ノイズ低減ソフトフェアにとっては複雑な問題です。何故なら、通常、ノイズ低減のアルゴリズムは被写体とその背景を区別していないからです。これは背景のノイズを除去する際に、被写体の詳細やコントラスト、色も一緒に失う可能性があることを意味します。

Andy Astburyのカヤネズミの画像を使った例

 Andy Asbury氏から使用許可を得た画像を使います。本説明の趣旨にピッタリの画像です。グレーの背景の中のカヤネズミが際立っていて、ノイズも多い画像です。ディテールタブの“ノイズ低減”だけを使って背景のノイズを除去しようとすると、被写体であるカヤネズミの詳細の消失と、コントラストと彩度の低下が避けられません。

Rawファイルへのリンク(Copyright Andy Astbury - Creative Common Attribution-share Alike 4.0): [12]

 pp3ファイルへのリンク [13]  似たような画像であれば、ツールやその設定が参考になると思われるので、この画像編集のpp3ファイルを提供します。

 従来、RawTherapeeでは画像のノイズを除去するためには、ディテールタブの“ノイズ低減”モジュールだけを使っていました。試しに、この機能をだけを使って本例の背景の輝度ノイズと色ノイズの除去を行いました。スクリーンショットはありませんが、そのための設定は次のようになりました:

  •  輝度ノイズのスライダー = 65
  •  色ノイズ(マスター)のスライダー= 20

 結果、明らかに背景のノイズは除去されましたが、その反面、カヤネズミの映りがねむくなり、色も褪せてしまいました。では、この様な画像はどうやってノイズ除去を行えばいいのでしょうか?

 手法の原則:

  •  2つのステップでノイズ除去 - 最初のステップは、被写体(カヤネズミ)の特に目や尻尾に注意して、詳細が失われない程度にディテールタブの“ノイズ低減”を極力少なく使って背景のノイズだけを軽減します。他の画像の場合、この手順は大きなパケットノイズの処理にも使えます。
  •  しかし、人間の目(及び脳)がノイズを認識するメカニズムは“色の見えモデル(CAM)”に似ていて、同じノイズでも背景が暗い場合より、グレーのような明るい場合の方が目立って見えます(特に色ノイズ)。この性質は、画像の明るい部分でも同じです。従って、ノイズ低減と一緒に色調コントラストも調整することを奨めます。そうすることで、被写体を際立たせながら、ノイズを目立たなくすることが出来ます。
  •  2つ目のステップは、“ローカル編集”の幾つかの機能、特に以下に示す5つのツール、を使ってノイズを処理することです:
  1. マスク:マスクを使って被写体(カヤネズミと野菜)と背景に対する作用に差を付けます。
  2. “ノイズ除去 色相イコライザ“:カヤネズミと背景の色の違いに応じてノイズ除去の作用に差を付けます。
  3. スコープ(ΔE):色の差異に応じてノイズ除去の作用に差を付けます。
  4. “輝度の詳細復元(DCT)”と、エッジ検出の“輝度と色の詳細のしきい値”スライダーを使います。このスライダーは元画像とウェーブレットによるノイズ除去処理後のノイズの違いをベースにフーリエ変換を使います。
  5. パッチベースのノイズ除去(ノンローカルミーンとも呼ばれます):ピクセルとパッチの類似性をベースにノイズ除去を行うアルゴリズムです。やはり、画像の詳細や質感を持つ部分と(例、カヤネズミ、野菜)、均質な部分(背景)でノイズ除去の作用に違いを持たせます。
  •  最後に、彩度とローカルコントラストなどを調整します。

 注意:上記説明の目的はノイズ除去の異なる手順であり、画像を美しく仕上げることは含まれていません。

最初のステップ:ノイズ低減と色調コントラストの調整

 下のスクリーンショットは、ローカル編集の“シャドウ/ハイライト&トーンイコライザ”で調整している場面を表示していますが、同時にディテールタブのノイズ低減を最小限使って背景のノイズの軽減も行っています(スクリーンショットには表示されていません)。

 更に、ロック式カラーピッカーをカヤネズミの目、毛、尻尾、及び野菜に配置しました。

  •  新しいRT-スポットを、作成・追加します(タイプは画像全体を選択します)。メインの設定の“マスクと融合に関する設定”パネルを開き、“輝度とカラーのマスクの背景色”のスライダーを0に設定します(この方が輝度値の変化が区別しやすくなります)。
  •  “現在のスポットに機能を追加”を使って、“シャドウ/ハイライト&トーンイコライザ”(機能水準は基本)をRT-スポットに追加し、コンボボックスの中の”イコライザ“を選択します。
  •  RT-スポットの中心円は“背景”部分に置きます。
  •  イコライザのスライダーを調整してベストな妥協点を探します。同時にディテールタブの“ノイズ低減”の2つのスライダーも使ってノイズを減らしています。表示されてはいませんが、輝度ノイズのスライダー値は4、マスターの色ノイズのスライダー値は6.5(調整法は”手動”)です。
    ノイズ低減とトーンイコライザによる調整
次のステップ:ローカル編集の“ぼかし/質感とノイズ除去”を使う
  •  “現在のスポットに機能を追加”で“ぼかし/質感とノイズ除去”機能を追加します。機能水準は”高度“を選びます。
  •  ノイズ除去のパネルを開き、“詳細レベルによる輝度ノイズ除去”のイコライザを使います。
  •  はじめは、どの程度の調整が必要か分かり難いと思います。効果の程度を知るために、一旦、カーブを最大に調整し、モードも“積極的”に変えて結果がどうなるか見るのがいいでしょう。もちろん、その後は、普通の調整に戻します。

 更に、前述の5つのスライダーの使い方にも慣れて下さい。例えば、“ノイズ除去 色相イコライザ”の作用を知るために、スコープ値を100、“輝度マスクをベースにした詳細の復元”を0、3つのDCT(離散コサイン変換)スライダーをデフォルト値のままにして、画像の変化を見ます。

  •  “ノイズ除去 色相イコライザ”の調整で、背景のノイズレベルを増やしたり、カヤネズミのそれを減らしたりします。
  •  “番手の低い詳細レベルの色度”を少し調整してみます。
  •  結果を査定します。
    詳細レベルによる輝度ノイズ除去とノイズ除去 色相イコライザによる調整

 次に:

  •  マスクを作成します。モジュールの中の“マスクと修正領域(ぼかし&ノイズ除去)”のパネルを拡張します。

 このマスクは背景と画像のその他の部分のノイズ除去に差を付けるために使われます。例えば、カヤネズミと野菜のノイズ除去に差を付けます。本例では、単純にL(L)カーブ、ガンマ、コントラストカーブを利用していますが、異なる画像の場合は、LC(H)カーブや、構造のマスク、スムーズな半径なども使う必要があるかもしれません。

    マスク
    マスク – コントラストカーブ
  •  マスクを有効にします。
  •  次に“ノイズ除去”のパネルを拡張し、その中にある“輝度マスクをベースにした詳細の復元”パネルを拡張します。
  •  詳細を復元するために“復元のしきい値”を調節します。注意:この機能はスライダーの値がデフォルト値(1.0)のままでは作用しませんが、スライダーを少しでも右に動かすと、細部とノイズの復元作用が最大になるように設計されています。その後、スライダーを右に移動するほど、細部とノイズの復元の程度が少なくなります。スライダーを調節して、細部の復元とノイズ軽減の妥協点を探ります。

 他の画像の場合は、以下の調整も必要になるかもしれません:

  •  “暗い領域の輝度のしきい値”:設定されたしきい値を0%として、マスク内で輝度値が最低の最も低い暗い部分100%まで、漸進的に作用します。
  •  “明るい領域の輝度のしきい値”:設定されたしきい値を0%として、マスク内で輝度値が最大の最も明るい部分100%まで、漸進的に作用します。本例では、輝度のしきい値機能により、野菜部分のノイズが除去されています。
  •  “暗い部分と明るい部分のノイズ除去”スライダーでノイズ除去の漸進性を変えることが出来ます。
  •  “グレー領域の輝度ノイズ除去”と“グレー領域の色ノイズ除去”の2つのスライダーで、マスクで保護されている中間トーン部分で、ノイズ除去を再適用することが出来ます。
    復元
  •  スコープを使う:“マスクと調節”の“マスクと共に変更された領域を表示”と“マスクなしで変更された領域を表示”を使えば、スコープの効果を見ることが出来ます。単にスコープを調節して画像の様子を見るだけでも構いません。本例では、“色相イコライザ”が無効、“輝度マスクをベースにした詳細の復元”=0、にしていますが、スコープの設定値が50~100では作用が敏感です。
  •  2つのスライダー;“輝度の詳細復元”と“輝度と色度の詳細のしきい値”を使います:
    •  “輝度の詳細復元”を徐々に増やします。
    •  並行して“輝度と色度の詳細のしきい値”も調節します。詳細が復元されるのが分かると思います。
    •  2つのアルゴリズムを使うことが出来ます – 一つは内部マスクを使うアルゴリズムで、もう一つはラプラス変換を使うアルゴリズム(オプション)です。それぞれ特徴があります。ラプラス変換の方がより選択的ですが、漸進性は下がります。
  •  パッチベース(ノンローカルミーン)のノイズ除去を使います。
    •  パッチベースのノイズ除去とは?通常のノイズフィルタは、目標とするピクセルの周辺ピクセルの値の平均をベースにノイズを減らします。一方、ノンローカルミーンフィルタによるノイズの除去は、画像の全ピクセル値の平均を使い、目標とするピクセルとの類似性を考慮してノイズ除去処理の重みを変えます。
ノンローカルミーン

 この方法に慣れるために、以下の操作を奨めます:

  •  “ノイズ除去”パネルを開き、コンボボックスから“ノンローカルミーンだけ”を選択します。
  •  マスクを無効にします。
  •  スコープを100に設定します。

 “ぼかし/質感&ノイズ除去”の機能モードは“高度にします。ノンローカルミーンに関わる5つのスライダーが表示されます:

  •  強さ
  •  ディテールの復元:画像の均質部分と質感のある部分の間で予備的な選択を行います。高い値ほど、質感のある部分の復元に重点が置かれます。
  •  ガンマ:均質である部分とそうでない部分の選択の精度を上げます。値を下げるほど詳細や質感が見えてきます。
  •  パッチの最大値:目標の大きさに対して適用するパッチのサイズを決めるスライダーです。理論的には、ノイズが多い画像ほどパッチサイズを大きくするべきですが、実際には画像の均質な部分と質感のある部分の間のアーティファクトが最少になるポイントを探します。
  •  半径の最大値:理論的には値を大きく取る方がノイズ除去の効果は高まりますが、その分処理時間が増えます。
最終調整 – 彩度とローカルコントラスト

 新しいRT-スポットを追加します。中心円はカヤネズミに置きます。 このRT-スポットに2つの機能を追加します:

  •  一つは“自然な彩度 – ウォーム/クール”(機能水準は基本)
    •  自然な彩度のスライダーを使って満足のいく彩度になるまで調整します。
  •  もう一つは、“ローカルコントラスト&ウェーブレット”(機能水準は高度)
    •  “レベルによるコントラスト調整 ウェーブレット2”を使って、番手の低いレベルのコントラストを増やします。
    ウェーブレット
その他の方法と機能

 上記と同じ目的で、以下の機能を使うことも出来ます:

  •  “ローカル編集”の“ぼかし/質感&ノイズ除去”を使う。
    •  “輝度マスクをベースにしたノイズ除去”:“輝度マスクをベースにした詳細の復元”と同じマスクを使っていますが、ウェーブレットによるノイズ除去を強めたり弱めたりします。これは“ノイズ除去 色相イコライザ”によるノイズ除去処理の前に作用します。“輝度マスクをベースにした詳細の復元”の方は、ノイズのある画像とノイズを除去した画像を比べることで行うのでノイズ除去の後に作用します。
    •  “イコライザ 白黒”と“イコライザ ブルー/イエロー レッド/グリーン”:“ノイズ低減”機能の輝度ノイズのカーブと同じですが、この目的に関しては作用が効果的ではありません。
    •  “ぼかし&ノイズ除去”パネルの中の“ガイド付きフィルタ”(コンボボックス):スライダーの一つである“ディテール”をマイナス値に設定すると、“輝度マスクをベースにした詳細の復元”と同じマスクで、同じ働きをします。
    •  “除外スポット”:そのRT-スポット内の画質を、“画像全体”のRT-スポットで行った調整の前の状態に戻すことが出来ます。
    •  “ぼかし&ノイズ除去”パネルの中の“メディアン”(コンボボックス):この目的に関しては作用が効果的ではありません。
    •  “ローカルコントラスト&ウェーブレット”の“レベルのぼかし”オプション:機能水準を高度にして、コンボボックスでウェーブレットを選択すると表示されます。詳細レベルの番手に応じた部分的な画像にぼかしを施すことが出来ます。
  •  ローカル編集タブ以外のノイズ除去機能を使う
    •  “ノイズ低減”:輝度ノイズと色ノイズをスライダーやカーブで除去します。ある程度、作用の選択は可能ですが、本例のようなケースでは十分とは言えないでしょう。
    •  ウェーブレットタブの“ノイズ除去とリファイン”の中の“ノイズ除去 色相イコライザ”と“参照ローカルコントラスト”を使います。

 これまでの説明とは別に、ノイズ除去機能の説明が“[Denoise/jp|RawTherapeeの3つのノイズ低減機能の比較]の中にもあります。

まとめ

 Andy Astbury氏の写真のおかげで、画像の均質な部分と詳細のある部分で異なるノイズ除去を行うための5つの機能の使い方を説明できました。

  •  “ノイズ除去 色相イコライザ” 
  •  “輝度マスクをベースにした詳細の復元”
  •  “スコープ - ΔE”
  •  “DCT(離散コサイン変換) - エッジ検出”
  •  "ノンローカルミーン"

 調整が難しい画像の場合は、これら5つの方法を駆使して正しいバランスを探る必要があるかもしれません。しかし、仕上がりは個人の好みなので一概には言えません。

 更に以下の様なケースもあり得ます:

  •  本例の画像では、背景が均質でしたが、画像によっては背景に詳細や異なる質感があり、同じような仕上がりにならないこともあるでしょう。
  •  本例の画像では、被写体と背景の色相が明らかに違っていましたが、画像によっては同じ色相が背景と被写体で混在していれば、調整が難しいでしょう。
  •  ΔEは色ノイズの影響を受けるので、色に関するノイズと詳細の区別が付きにくいことがあります。
  •  “エッジの検出”も高い輝度ノイズに影響を受けます。

難し過ぎる?ウェーブレットを使う

実例(諦めないで、思ったほど難しくない)

 下のスクリーンショットは元画像の“露光量”を+1.5に調節して明るくしたものです。トーンマッピングを使って部分的な明暗の印象を更に調節します。手順を説明するのが目的なので、美的な要素は考慮していません。

    アムステルダムの風景

    Rawファイルのリンク(RawTherapee - Creative Common Attribution-share Alike 4.0):[14]

“ウェーブレットのトーンマッピング”を使う

  •  設定は全てデフォルトのままにしておきます。
  •  “ローカルコントラスト&ウェーブレット”機能を追加し(機能水準は高度)、“ウェーブレットピラミッド2”のパネルを拡張します。
  •  スコープ(モジュール内)の値を80にセットします。
  •  スクリーンショットに表示されているように、各数値を設定します。
  •  もちろん、効果の程は個人の好みなので、それに応じて設定を変えます。
  •  この“トーンマッピング”はRawTherapeeに備わっている他のアルゴリズム(“ダイナミックレンジの圧縮”に使っているFattal、“トーンマッピング”と“対数符号化”に使っているMantiuk)とは異なります。RawTherapeeのウェーブレット専用アルゴリズムです。
    ウェーブレットのトーンマッピングアムステルダムの風景

質感を強める3つの方法

 実演を兼ねて3つの方法を使います:

  •  トーンマッピング (Mantiuk)
  •  レティネックス
  •  ウェーブレット

準備 – 元画像(ベニス)

    準備

    Rawファイルへのリンク(Copyright Sébastien Guyader - Creative Common Attribution-share Alike 4.0): [15]

"トーンマッピング"を使う

  •  “輝度の標準化”オプションを有効にします。これで編集画像の輝度の平均と分散が元画像のそれらと同じになります。
  •  機能水準を高度にして、“エッジ停止”と“スケール”を使って質感を調節します。
    トーンマッピング-'mantiuk'

"レティネックス"を使う

  •  上記と同じく、“輝度の標準化”オプションを有効にします。
  •  この方法では、"高速フーリエ変換“を使うことが出来ます。
    レティネックス

"ウェーブレット"を使う

  •  “詳細レベルのダイナミックレンジ圧縮”、“減衰応答”、“バランスのしきい値”、“残差画像の圧縮”を使います。
  •  "レベルによるコントラスト“も使ってみます。
  •  “方向によるコントラスト”も使ってみます。
  •  或いは、これらを併用します。
    ウェーブレットのトーンマッピング

ブレンドモードを使ったスポット(レイヤー)の融合

 “色と明るさ”(機能水準のモードは高度)の中の“ファイルの融合”を使えば、レイヤーの融合効果を真似することが出来ます。各RT-スポットをレイヤーと見なすことが出来るからです(但し、類似しているだけで、同じではありません)。最大2つのRT-スポットを“オリジナル画像”に融合することが出来ます。

  •  “初めのRT-スポット(レイヤー)を“オリジナル”と呼ぶことにします。その画像データはローカル編集の調整を全く行っていない画像のものと同じです(“除外スポット”を適用した場合と同じデータ)。
  •  例えば、RT-スポットを相互に重ね合わせる場合(例えばRT-スポットが6つある時):
    •  現在のRT-スポットが6番目のものであれば、“ファイルの融合”機能はコンボボックスの中の選択に応じて、6番目のスポットを、5番目のスポット(前のスポット)、或いは“オリジナル”(元データファイル)、または色が定義された“背景”、と融合させます。
    •  現在のスポットが6つの内の3番目であれば、“ファイルの融合”は、現在のスポットと2番目のスポット(前のスポット)、或いは“オリジナル”(元データファイル)、または色が定義された“背景”の何れかと融合させます。
    •  融合のモードは、Photoshop@の融合モード(通常、差異、。。。ソフトライト(レガシー)、オーバーレイなど)から着想したもので、21種類の組み合わせが可能です。
    •  各融合モードで、不透明度、ΔE、コントラストのしきい値を変える(“背景”を除く)ことが出来ます。
    •  “色と明るさ”に備わっている“階調フィルタ”は融合したファイルにも使えます。

本例は、この機能を使ってぼかしを施します。

準備

 RT-スポットの設定はこれまでの例と同じです。“ぼかし/質感&ノイズ除去”の機能を追加します。機能水準は”高度“です。

  •  RT-スポットを“インバース”モードに設定します(ぼかし&ノイズのパネルを拡張すると“インバース”のチェックボックスが表示されますので、それに✔を入れます)。
  •  目標とする効果に応じてスコープを90、或いは100に設定します。
  •  半径を高い値に設定します(“ƒ 常に高速フーリエ変換を使う”に✔を入れて、2000以上にする)。ぼかしのモードは“輝度と色度”にします。
    準備

    Rawファイルへのリンク(RawTherapee - Creative Common Attribution-share Alike 4.0) [16]

2番目のRT-スポットを作成

 2つ目のRT-スポットを作成し、”色と明るさ“機能を追加します。機能の水準のモードは”高度“にします。

  •  “カラー機能のスコープ”を100にします。
    2番目のスポット

初めの融合-“標準”モードを使う

  •  “色と明るさ”モジュールの"ファイルの融合"パネルを拡張します。
  •  コンボボックスが現れ、デフォルトでは“なし”が表示されています、他は:
    •  オリジナル:未調整のRT-スポットデータと融合させるオプションです。
    •  “前のスポット”:前のRT-スポットと融合させるオプションです(前のスポットがない場合はオリジナルと融合します)。
    •  “背景”:色が定義された背景と融合させるオプションです。
  •  3つの中の何れかを選択すると、融合モードを選ぶコンボボックスが表示されるので、そのドロップダウンリストの中から好みのモードを選択し、その下にある背景と融合、不透明度、コントラストのしきい値のスライダーを調整します。
  •  "色と明るさ"のモジュールの他の機能(明るさ、コントラスト、彩度)も使えます。
    融合"通常"

2つ目の融合に ソフトライトのブレンドモードを使う

 融合モードの中から“ソフトライト”を試します(或いは、他のモードでも)。

  •  設定(例、不透明度)を調整し、モードによる違いを観察します。
  •  “オリジナル”を“前のスポット”に置き換えて、違いを観察します。
    融合"ソフトライト(レガシー)"

単純なマスクを使って色の選択を増やす

準備

  •  敢えて調整の難しい画像を補正してみます:空の色と山の色の差が小さく、更に山肌部分に多くの不規則性が見られます。
  •  基本的な設定は前例とほぼ同じです。“カラー機能のスコープ”は40に増やしました。作用の影響が山肌以外の部分にも多少及んでしまうかもしれませんが、山肌の補正を適切に行うためには、ある程度妥協します。
  •  調整結果を分かり易くするため、敢えて輝度(明るさ)と色度の調整を強くしています(本項の説明は綺麗に仕上げることが目的ではないため)。空の色が影響を受けないように注意します。
  •  マスクの代わりに、“除外スポット”や、RT-スポットの領域設定でベジェ曲線を使う(将来)ことも出来ますが、ここでは簡単なマスクの使い方を学ぶことを目的にします。マスクに複数のカーブを使ったり、RT-スポットを複製して複数のマスクを作ったりすることも出来ます。
  •  ローカル編集には2種類のマスクがあります:
    •  一つは、画像に効果を足したり、画像から効果を引いたりするマスクではなく、ΔEを使う形状検出の質を向上させるためのマスクです。
    •  もう一つは、画像に効果を足したり、画像から効果を引いたりした際に得られる結果の違いを利用するためのマスクです。
    •  本例では初めのマスクを使います。
    準備

    Rawファイルのリンク(Jacques Desmis - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [17]

初めに、明るさと色度を大きく増やす

  •  結果に注目: 調整により山肌の色の変化が空にまで影響して染み出しています。この様な結果を避けるようにします。
    明るさと色度を増やす

単純なマスクを作る

  •  3つのカーブL、C、Hのうち1つを使います。本例ではLを使います。
  •  L(L)カーブを注意深く見て下さい:カーブの節目がグレーの濃さが変わる境界の所にあります。この“境界”は、RT-スポットの3つの参考値(色度、輝度、色相)に相当するもので、C(C)、 L(L)、LC(H)、全てのカーブに共通します。
  •  形状検出だけを改善するために“ブレンド”のスライダーの使用は避けます。
  •  “マスクと修正領域”の中の“修正された領域をマスクと共に表示”を使うことも出来ます。
    マスクの表示

結果を踏まえて更に調整

  •  "マスクと修正領域"でコンボボックスの中から“調整及び修正した画像”を選択します。
  •  "マスクを有効にする"に✔を入れます。
  •  必要に応じて、"スムーズな半径“のマスクを調節します。
  •  "コントラストのカーブマスク"と 必要であればL(L)カーブを使ってレタッチを行います。
  •  機能の水準のモードを“高度”にして、"スムーズな半径"のマスクの代わりに“ガンマ”や“勾配”、“ラプラシアンのしきい値”のマスクを試してみます。
  •  ここまで十分な結果とは言えませんが、本例はマスクがどの様に働くか、知る方を優先しています。

 マスクを使った調節の改善方法は2つあります:

  •  RT-スポットの複製を使う:RT-スポットの複製を作成します。その中心の位置を前のRT-スポットの中心から少しずらし、複製したRT-スポットで前のRT-スポットの調節で生じた変則、或いは不完全な部分を補正します。更に、必要に応じて、複製したRT-スポットの設定値(本例では“色と明るさ”)を追加調整し、より均等な画質を求めます。
  •  機能に備わったマスクを使う:マスク機能が備わっている別な機能モジュールを有効にして、そのマスクを活用します。この場合、両マスクはΔE(スコープ)を計算に入れるため、RT-スポットと同じ参考値(輝度、色度、色相)を使います。

 ΔEの考慮について:

  •  ローカル編集の中核機能の一つ、例えば、ΔEを考慮する“スコープ”を無効にすることが出来ます。そうすることで“スコープ”を無視して、マスクだけの調節に専念出来ます。この場合はスコープを100に設定します。スコープの機能が失われるので、“ブレンド”の機能だけをマスクと画像の組み合わせに使うことが出来ます。
  •  “マスクと修正領域”の中にあるマスク機能(コントラストカーブのマスク、色度のマスク、ガンマのマスクなど)を使う場合、“設定”の中の特定の機能、例えば“ΔE画像のマスク”、には敏感に反応するので注意が必要です。
    調整の結果

“輝度マスクをベースにした詳細の復元”を使った微調整

 RawTherapeeの中の他のマスクとは異なる使い方をするマスクを作りました。これは直接的に使うマスクで、その解析が“色と明るさ”の調整を行っていない画像と、調整を行った画像を組み合わせるために使われます。

  •  ロック式カラーピッカーのL*a*b*値と実際の値が一致するようにするため、マスクの背景を調節します:ローカル編集のメインの設定の中にある“マスクと融合に関する設定”で、輝度とカラーのマスクの背景色“を0にします。

 “輝度マスクをベースにした詳細の復元”パネルを開いて使います:

  •  マスクの暗い・黒い部分を、限りなく元の画像に近い状態に復元できます。
  •  マスクの非常に明るい・白い部分を、限りなく元の画像に近い状態に復元できます。
  •  上記以外の部分では、色と明るさの設定通りの調整が反映されます。

 以下のスクリーンショットは、“マスクなしで変更した画像を表示”を使って上記の調整結果を表示しています。 pp3へのリンク:

    [18]

    色と明るさ
マスクの作成

 “マスクと修正領域”の中の“ぼかしマスク”を“コントラストのしきい値”と“半径”で調節します。この調節で、ソルトマウンテンの右側部分のグレー値が上がり、“色と明るさ”の調整効果が和らぎます。機能水準を高度にして復元と一緒に使うこのマスクは、通常モードのマスクと対立することはありません。

  •  通常モードのマスクを使えば選択領域の精度が上がります。
  •  高度モードのマスクと復元を使えば更に精度が上がります。
    マスク

元画像の特徴を復元

  •  “マスクと修正領域”パネルのマスクのオプションを有効にします:チェックボックスに✔を入れます。
  •  “輝度マスクをベースにした詳細の復元”のパネルを拡張します。
  •  “復元のしきい値”をセットします:2に近いほど、マスクの暗い・非常に明るい部分のより広範囲が元画像に近い状態になります。
  •  “暗い領域の輝度のしきい値”と“明るい領域のしきい値”のスライダーを使って、画像のどの部分を含めるか、除くか調節します。設定された値(本例では、暗い領域が32.1、明るい領域が85)より下、上の部分でマスクの効果が漸進的に考慮されます。
  •  必要に応じて“減衰”を調節し、効果の減衰率を変えます。
  •  “マスクと修正領域”を無効にしてみます:“マスクを有効にする”✔を外します。
  •  再び、“マスクと修正領域”を有効にして、今度は“復元のしきい値”を1に再設定して効果の違いをみます。
  •  “復元”の4つの設定だけでなく、マスクの他の設定も変えてみます。
    復元

オリジナルスポットとマスクをブレンドする

 マスクを使って仏塔の画像の遠近感(レリーフ)を改善します。

準備

  •  画像の遠近感を高めるには、“詳細レベルによるコントラスト調整”や“ウェーブレットピラミッド”機能を使うことも出来ますが、マスク機能を学ぶため、“ブレンド”を使って目的の効果を出します。
  •  “色と明るさ”の機能を追加し、機能の水準を“高度”にします。“カラー機能のスコープ”は40です。
    調整の準備

    Raw画像へのリンク(Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [19]

 

マスクの設定-避けたい操作

  •  目的の効果を2つの機能を使って行います:
    •  色を選択するためにLC(H)カーブを使います。
    •  コントラストのしきい値とぼかし機能を合わせた“ぼかしのマスク”を使います。
  •  “FFTW”を有効(✔)にします。処理時間は増えますが、その分調整の質が上がります。無効の場合、半径の最大値は100までですが、有効の場合すると1000まで上げられます。
    マスクの表示
結果
  •  “マスクを有効にする”に✔を入れます。
  •  “ブレンド”のスライダーを好みに合わせて調整します。
  •  必要であれば、“マスクのツール”の中の"スムーズな半径“も調整します。
  •  “色と明るさ”の、マスクに関係しない機能(明るさやコントラストなど)を調整している場合は、“スポットの構造”スライダーの調整が影響します。
  •  この時点で、画像が主体色を持ってしまったことが分かります。LC(H)カーブと一緒に“ブレンド”機能使ったことが原因です。
    •  カーブのモードを“リニア”に変えると、主体色がなくなるのが分かります。
    •  この問題に対応するために、“ブレンド”モードを使う・使わないにかかわらず、複数のマスクの設定を一緒にしないようにします
    •  使う・使わない、の両方の設定が必要な場合は、前述の「単純なマスクの使い方」で、複製モードで2つ目のRT-スポットを作成し、一つは“ブレンド”を使い、もう一つのRT-スポットでは使わない(或いは、異なるブレンド値を使う)とする方がいいでしょう。他の機能に備わっているマスクを使うことも出来ます。

適切な処理手順

 前述した様に、2つのステップで処理します、例えば、2つのスポットを作成して:

  •  初めのRT-スポットはLCHカーブだけを考慮して使い、
  •  2番目のRT-スポットは画像の構造を変えるだけに使います。

 画像の構造を変えるためのマスクタイプのツールが幾つかあります(機能水準が“高度”の場合)。

  •  コントラストのしきい値とぼかしの機能を持つ “ぼかしマスク”。
  •  画像の構造に直接作用する“構造マスク”。
  •  これら2つの機能を使う場合は、LCHカーブは無効(カーブなし)にしておく必要があります。但し、必要であれば、L(L)カーブをLCHと関連付けることは出来ます。
  •  2つの機能、“ぼかしマスク”と“構造マスク”は相互に関連付けることが出来ます。
  •  "ローカルコントラスト(ウェーブレット)"と"ウェーブレットのレベルの選択"はL(L)マスクカーブと関連付けることが出来、“ローカルコントラスト”の効果を生みます。

 操作手順:

  •  "マスクを有効にする"を有効にします
  •  好みに応じて“ブレンド”の値を調整します
  •  必要であれば、マスクツールの"スムーズな半径“を調整します
    結果

“共通のカラーマスク”の使い方 – 2つのRT-スポットの融合の方法

 このマスクの働きは“ローカル編集”の他の機能に付属しているマスクと同じではありません。例えば“色と明るさ”モジュールに備わっているマスクは、色と明るさの機能を補間する働きをします。しかし、“共通のカラーマスク”はそれ自体が一つの機能として働きます。画像のコントラスト、輝度、色度、または質感を変えることが出来ます。

  •  C(C)、L(L)、LC(H)、の3つのカーブで構成(“高度”モードでは、更に“構造マスク”と“ぼかしマスク”が追加されます)され、元画像と比べた時の色や構造に違いを持たせる働きをします。
  •  これらの“違い”は、“色と明るさ”機能の調整で変化する、“明るさ”、或いは“色度”の違いに似ています。
  •  マスク画像と元画像の色の違いは、ΔEと境界の階調調整のパラメータで考慮されます。
  •  もちろん、同じRT-スポットの中で他の機能と関連付けて使うことが出来ます。
  •  以下、単純な例を使って、この機能の働きを説明します。

準備

 初期の設定はこれまでの例と概ね変わりません。

  •  RT-スポットに”共通のカラーマスク“の機能を追加します。機能の水準は”標準“です。この機能の効果を見せるのが目的なので、他の機能は追加しません。
  •  マスクを作成します。手順説明を単純化するために、RT-スポットの参考値を考慮するのは、C(C)とL(L)のカーブ2つだけです。
  •  注意:2つのスライダー、“輝度マスクの追加/削除”と“色度マスクの追加/削除”は、効果が弱く分かり難いので、デフォルト値を敢えて0にしていません。両方とも-10に設定しています。
    準備

    Raw画像へのリンク(Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [20]

輝度のマスク

 このカーブは輝度を少し変化させます。

  •  カーブの頂点が明るいグレーと濃いグレーの境目に位置しています。ここが、“輝度マスク”の輝度がRT-スポットの参考値と一致しているポイントです。
    輝度のマスク

色度のマスク

  •  カーブの頂点が明るいグレーと濃いグレーの境目に位置しています。ここが“色度マスク”の色度がRT-スポットの参考値と一致しているポイントです。
    色度のマスク

ΔEのプレビュー

ここで、“画像+マスク”と“元画像”の間のΔEを調整します。

  •  “スコープ”を上げたり、下げたりしてみて下さい(ここで言うスコープは、“共通のマスク”の中のスコープのことです)。
  •  “設定”の中の、“形状検出”の変数を変えてみます:“ΔEのスコープのしきい値”、“ΔEの減衰”、“バランス ab-L(ΔE)”、“バランス C-H(ΔE)”
    ΔEのプレビュー

修正領域を表示

 次に、マスクと修正領域の表示のコンボボックスから、“修正された領域をマスクと共に表示”を選びます。

  •  “輝度マスクの追加/削除”と“色度マスクの追加/除去”のスライダーを調整してみて下さい(これらスライダーは“不透明度”の機能とも呼べます)。
    変更を表示

結果

 その他の調整:  

  •  “スコープ”(“共通のカラーマスク”のスコープ)の調整
  •  マスクを有効にして(✔を入れる)、マスクツールの“スムーズな半径”を使い、3つのカーブ、C(C), L(L), LC(H)で生成されたマスクのアーティファクトを減らします。
  •  色度のマスクの調整
  •  マスクツールの"コントラストカーブ“でマスクを調整します
  •  “設定”の中の“マスクと融合”パネルを拡張し、ΔE画像のマスクを有効にして、“スコープ(ΔE画像のマスク)”スライダーを動かしてみます:これはマスクに作用します。RT-スポットの中心(参考値)と比べたマスクのΔEを考慮します。このスコープはモジュールの先頭にある元画像と作成したマスクの違いに作用する“スコープ”とは異なります。

 機能の水準を“高度”に切り替えます:

  •  “ソフトな半径”は、元画像とマスクを“追加/削除”した後の画像との間のアーティファクトを減らすことが出来ます。調整による変化は“変更した画像の表示”で確認出来ます。
  •  マスクツールの“ラプラシアンしきい値”を動かし、“スムーズな半径”との効果の違いを見ます。
  •  “ガンママスク”と“スロープマスク”の効果を試します。
  •  画像の構造を以下の機能を使って変えてみます:“構造マスク”、“ぼかしマスク”、“ローカルコントラスト(ウェーブレットのレベル)のマスク”
  •  “階調フィルタのマスク”の効果を試します。
    結果

 次に、色と明るさモジュールの中の“ファイルの融合”を使って、“共通のカラーマスク”で調整した画像を更に強化します。

新しいRT-スポットを追加、“色と明るさ-高度”

 あくまで機能を学ぶための説明なので、画像の仕上がりは考慮していません。21通りの組み合わせの中から3つを選んで、融合モードを説明します。

  •  新しいRT-スポットを追加作成します。
  •  “色と明るさ”機能を追加し、機能の水準は“高度”にします。
  •  ΔEのプレビューを見極めながら “カラー機能のスコープ”を設定します。
  •  輝度、コントラスト、色度を調整します。
    RT-スポットを追加

融合を準備

 “ファイルの融合”パネルのコンボボックスで“前のRT-スポット”を選択し、“色と明るさ”で作成した上記の新しいRT-スポットを“共通のカラーマスク”で作成した前のRT-スポットと融合します。

    融合の準備

最初は“標準”モードで融合

  •  “前のRT-スポット”を選択した後に表示されるコンボボックスで"標準"の融合モードを選択します。
  •  任意に3つの設定を行いました:背景の融合=54.2(2つのRT-スポットの間のΔEが考慮されます)。不透明度=54.2(各レイヤーそれぞれを約50%にします)。コントラストのしきい値=12.5 (画像の均一な部分と質感のある部分の違いを考慮します)。
  •  背景の融合と不透明度が同じ54.2になっていることに特別な意味はありません、あくまで任意です。
    通常モードの融合

2番目の融合モード“ソフトライト”

 融合モードをコンボボックスで“ソフトライト”に変更します。

    ソフトライト(レガシー)モードの融合

3番目の融合モード“色の焼き込み”

  •  今度は、融合モードを“色の焼き込み”モードに変えてみます。
  •  明るさや色度の変化を比較します。
    色の焼き込みモード

追加情報

“共通のカラーマスク”は何枚でも作成できます。単純にマスクを複製し、似たような設定をして前のマスクの近くにに置きます。

 マスクカーブ、C(C), L(L), LC(H) 、に関する幾つかの重要ポイント:

  •  これらのカーブはマスクを作成するために使われます。
  •  カーブが左のようであれば(カーブの頂点がRT-スポットの参考値にある場合。本例の参照はL)、目標とする領域設定の精度が上がります。
  •  カーブが中央のようであれば(カーブの最下点がRT-スポットの参考値にある場合。本例の参照はH)、色(L或いはC)が褪せます。
  •  カーブが右のようであれば(カーブの最下点がRT-スポットの参考値と外れた所にある場合。本例の参照はH)、色(L或いはC)が褪せます。
    マスクの選択
  •  この項の説明では主体色がマゼンタ(花)とグリーン(葉)の2つの単純な画像を使いましたが、通常の画像の様に、色、輝度、色度の変化がもっと多い場合は、より入念なマスク作成が必要でしょう。
  •  本説明ではRT-スポットの参考値を使うという、“ローカル編集”の基本を忠実に守りました。カーブだけを使うことも出来ますが、結果は全く異なるものになるでしょう。
  •  同様に、融合においてもマスクに関して同じ色の範囲を使いました。2つ目のRT-スポットを追加して、葉の上に置く、という方法を取ることも出来ましたが、花の色の変化が少ない結果となるでしょう。

露出不足のポートレート、肌の印象を補正

 女性のポートレート画像で、ローカル編集を使い、以下の補正を行います。:

  •  “露光量”を増やして暗い印象を軽減します。
  •  “詳細レベルによるコントラスト調整”を使って、肌の印象をソフトにし、“明瞭”を使って顔を明るくします。
  •  “階調フィルタ”で、顔の右側部分の陰を軽減します。
  •  3つの“除外RT-スポットを使って、調整作用が目と口に及ばないようにします。
  •  “LC(H)のマスク”を使って、髪の毛の印象がソフトになるのを避けます(つまり、“詳細レベルによるコントラスト調整”の効果が髪の毛に影響しないようにします)
  •  調整前と調整後を比較します。
  •  留意:上記の調整はあくまで目安です。ユーザーの好みで調整を決めます。
    ローカル編集前の画像

    Raw画像へのリンク(Copyright Pat David - Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0): [21]

露光量を増やす

  •  メイン露光補正モジュールの中の露光量補正のスライダーを+0.5にします。
  •  ここで、RT-スポットを使い、露光量補正の効果を画像全体ではなく、特定領域に制限することも出来ます。
    メインで露光量補正

“詳細レベルによるコントラスト調整”(CBDL)を使う

  •  RT-スポットを追加作成します。“スポットサイズ”は大きくします。47
  •  詳細レベル0~4のコントラストを漸次的に下げます。
  •  “明瞭”を60に設定します。
  •  “スコープ”の値を40に設定します。
    ローカル編集機能のCBDLによる調整

諧調フィルタを使う

  •  別なスポットを追加作成し、“色と明るさ”の機能を追加します。
  •  階調フィルタのパネルを開き : “輝度”= -0.6、“階調フィルタの角度”=5に設定します。
  •  機能の水準を高度に変えれば、“色度の階調の強さ”を調整することも出来ます。
    階調フィルタの変数を調整

目と唇を除外

  •  3つのRT-スポットを“除外”モードで追加作成し、目と唇に配置します。
  •  RT-スポット(除外)の“スコープ”で好みの効果に調整します。
    除外モードのRT-スポットを使う

髪への影響をマスクで除外

  •  初めに作成したRT-スポットに戻ります。
  •  “マスクと修正領域”のパネルを拡張します。
  •  コンボボックスの中から“マスクの表示”を選択します。
  •  LC(H)カーブを使います。
  •  肌の色を確認します(薄いグレーと濃いグレーの境がその部分です)。
  •  スクリーンショットの様にLC(H)カーブを下げます。
  •  マスクツールの中の“ソフトな半径”を調整します。
  •  必要に応じて“ガンマ”や“スロープ”、または“コントラストカーブ”を調整します。
    マスクの使用

結果

  •  コンボボックスから“調整及び修正した画像”を選択します。
  •  "マスクを有効にする"に✔を入れます。
    調整結果

補正の前後を比較

    調整前と後の比較

CBDLの代わりに“ウェーブレットのレベルによるコントラスト調整”を使う"

  •  “ウェーブレット”の機能は、CBDLより強力な機能です。但し、調整の選択肢が多いので、複雑に感じるかもしれません。
  •  しかし、“減衰応答”(ダンパー)と“オフセット”を使うだけでも、CBDLと同じ効果を出すことが出来ます。しかも、CBDLは各詳細レベルで線形的な調整しか行えませんが、“ウェーブレットのレベル”は各詳細レベルで非線形的な調整が出来るので、ノイズやアーティファクトの増幅を避けることが出来ます。
  •  このウェーブレットのモジュールは“明瞭”機能も持っています。
    ウェーブレットを使ったコントラストと明瞭の調整

ウェーブレットでマスクを使う

    ウェーブレットのマスク