Wavelets/jp: Difference between revisions

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 更に、各レベルで係数の組み合わせが解析され、その平均値(各レベルで計算されるのでそれぞれ異なった値になります)及び標準偏差が算出されます。これらに係数の最小値と最大値を加えることで、各レベルのコントラスト特性が得られます(これら特性は[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E5%88%86%E5%B8%83 ガウス分布]ではありません)。以上全てがこの機能の様々なアルゴリズムで使われます。
 更に、各レベルで係数の組み合わせが解析され、その平均値(各レベルで計算されるのでそれぞれ異なった値になります)及び標準偏差が算出されます。これらに係数の最小値と最大値を加えることで、各レベルのコントラスト特性が得られます(これら特性は[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E5%88%86%E5%B8%83 ガウス分布]ではありません)。以上全てがこの機能の様々なアルゴリズムで使われます。


== ユーティリティ ==
== 実践 ==
=== 詳細レベルの総数 ===
 画像を分解した後、これら画像を様々な目的で使うことが出来ます:画像の圧縮、ノイズ低減処理、シークレット透かし、天体撮影の特殊な残差画像の処理など。
 このスライダーで、幾つの詳細レベルに分解するか決めます。レベルの数が増えれば、処理時間やメモリー使用量も増えます。


 例えば、レベルの数を5のような低い数に設定すると、詳細レベルのスケールは最大で32x32ピクセルまでに限定されます。この場合、残差画像は、レベル0~5までの詳細データが元画像から取り去られただけの画像で、まだ多くのデータが残っているため、映りはあまり元画像と変わりません。
 目的に応じて、単独または複数のレベル、残差画像、或いは、両方の組み合わせで、調整が可能です。


 9(10番目のレベルは“エキストラ”と名付けています)に設定すると、詳細レベルのスケールは最大512x512ピクセルになります。“エキストラ”を選べば、それが1024x1024ピクセルになります(但し、それはプレビュー画像が大きくないと見ることが出来ません)。レベル9の設定では、0~10段階のレベルに分解された際のデータが元画像から取り去られていますので、残差画像の映りは、ぼんやりしたマスクだけのように著しく変わります。
[[File:Wavelet_detail_size.jpg|thumb|350px|各レベルのディテールの実際の大きさ]]
:: '''1 (最も小さい)''' : 2x2ピクセル
:: '''2 ''' : 4x4ピクセル
:: '''3 ''' : 8x8ピクセル
:: '''4 ''' : 16x16ピクセル
:: '''5 ''' : 32x32ピクセル
:: '''6 ''' : 64x64ピクセル
:: '''7 ''' : 128x128ピクセル
:: '''8 ''' : 256x256ピクセル
:: '''9 (最も大きい)''' : 512x512ピクセル
:: '''エキストラ ''' : 1024x1024ピクセル


 残差画像は、上記のレベルの数で設定された全ての詳細レベルの情報が、元画像から除かれた画像を言います。例えば、レベルの数を7に設定した場合、初めの3つ(レベル0~2)のコントラストスライダーしか使わないとしても、残差画像は0~6までの詳細レベルのデータが除かれた画像です、レベル0~2だけのデータを除いた画像ではありません。
 分解するレベルの総数が4或いは5、などと少ない場合は、画像の解析単位も最大16x16ピクセル或いは32x32ピクセルに留まります。元画像から引かれるレベルのデータが多くないため、残差画像の映りは元画像と比較的似ていますが、画像編集に役立つ特性は大きくありません。一方、レベルの総数を9やエキストラに設定すると、解析単位が最大512x512ピクセル、1024x1024ピクセルになります。残差画像は著しく変化し、ぼかした背景の様な映りになりますが、この残差画像が編集にとって重要な役割を果たします。


 重要!:RawTherapeeでは、詳細レベルのスケールが元画像のサイズを超えない範囲で、幾つもの詳細レベルに画像を分解できます。仮に元画像のサイズが1024x1024ピクセルより大きければ、1024x1024ピクセルの詳細レベル(“エキストラ”)に対して行う調整も保存画像で見ることが出来ます。 元画像がそれより小さければ、1024x1024の詳細レベルは無効です。ここは重要な点なので覚えておいて下さい。この原則はプレビュー画像に対しても同じだからです:元画像は1024x1024より大きいが、プレビュー画面で表示できるエリアがそれより小さい場合は、この詳細レベルがプレビューでは無効にされてしまうのです(但し、保存画像では有効です)。と言うことは、プレビュー表示の大きさによっては、そこで見る画像と、保存画像とで、見え方が著しく違う可能性があるということです。これをお忘れなく。プレビュー画像の表示エリアは、左右のパネルを非表示(ショートカット“m”)にしたり、RawTherapeeを全画面表示(ショートカット“F11”)にしたりすることで、ある程広げることが可能です。画面のコントラストスライダーの下に、その時点で表示可能な詳細レベルが表示されます:例えば、“プレビュー表示可能な詳細レベル=9”という様に。
 ウェーブレット変換による分解で、画像は明度(L*)と補色次元(a*とb*)に分解された複数のレベルと一つの残差画像になります。これにより各レベルに対して異なる明るさと色調の調整、そしてそれらとは完全に異なる処理を残差画像に施すことが可能となります。つまり、レベルの画像と残差画像はそれぞれ独立していて、調整の影響を受けるレベルは変更を加えたレベルだけです。残差画像は独立しているので、各レベルの調整に関わらずそれらの影響を受けません。


=== 画像全体とタイルサイズ ===
 注意:“ウェーブレットのレベル”と“[[CIECAM02/jp|CIE色の見えモデル02]]”の機能を併用すると、アーティファクトが発生するかもしれません。これはCIECAMの色空間が、L*a*b*色空間に近いとは言え、異なるからです。コードが異なるのでアーティファクトの発生は物理的に避けられませんが、発生するかどうかは調整次第です。
 選択ボックスから、ウェーブレット変換を適用する画像の大きさを決めます:
* 画像全体
* サイズの大きなタイル
* サイズの小さなタイル


 質の点を考えれば、支障がない限り、“画像全体”を使うことを奨めます。タイルを使う方法より精度が高いからです。しかし、貴方の元画像が非常に大きく(例えば、50メガピクセル以上)、調整過程でRAM容量不足の心配がある場合は、タイルを選択します。
=== プレビュー ===
 スクリーン上の画像の大きさは、画像のシャープネスや様々な機能の調整による小さな変化に直接的に影響します:'''それら変化は画像を100%(或いはそれ以上)に拡大して初めてわかります。'''


==== 必要なメモリー容量の目安 ====
 これは実際には処理速度の制限([[General Comments About Some Toolbox Widgets/jp|プレビューエリアの制限]]を参照)から最終画像のサイズを意識しておく必要があると言う意味です。最終的に画像サイズを縮小する(切り抜きではなく、リサイズのことです)予定であれば、ウェーブレットによる調整を行う前にリサイズしておくことを奨めます。そうでないとプレビューで見る画像と最終的に書き出した画像の映りが違う場合があることを覚えておいて下さい。
 適用が“画像全体”で、詳細レベルの総数を9に設定した場合の必要メモリー量(MiB:メビバイト)を、2つのカメラを例にとって説明します:
# ペンタックス K10D (10.2MP) 3888 x 2608
# ニコンD810 (36.3MP) 7360 × 4912


; ベースライン
 もう一つ別な制約があります:RawTherapeeはプレビューに表示できる全てのレベルを使いますが、貴方がスクリーンで見る画像の部分より大きいディテールを持つレベルは無視します。但し、無視されたレベルに施された調整は画像が保存される際に反映されます:
: RawTherapeeでその画像を開く際に必要な必要最低限のメモリー
 
: <code>width*height*12</code>
* '''例1:'''画像の大きさが'''4096x2160'''ピクセルで、それを100%以上の拡大率で見た時、プレビュー画面で最終画像の大きさに似た'''1500x1200'''ピクセルで見ることが出来る場合。これは理想的な環境です。全てのレベル(最大のエキストラレベルまで)で行った調整が確認できるからです。加えて、どのレベルでも確認出来た調整効果は最終画像に反映されます。
: K10D: 116MiB
* '''例2:'''画像の大きさは'''4096x2160'''ピクセルですが、100%以上の拡大率で見る際のプレビュー画面の画像の大きさが'''300x200'''ピクセルの場合。上記と異なり、番手が7(128x128ピクセル)より大きいレベルに加えられた調整効果をプレビューで確認出来ません。確認は出来ませんが、それら調整効果は画像を保存する際には反映されています(元画像の大きさが1024x1024ピクセルより大きいからです)。
: D810: 414MiB
* '''例3:'''画像の大きさが'''720x480'''ピクセルで、それを拡大して'''300x200'''ピクセルのプレビューで見る場合。番手が7(128x128ピクセル)より大きいレベルに加えられた調整効果をプレビューで確認出来ません。画像を保存する際に、番手8(256x256ピクセル)の調整は反映されますが、番手9及びエキストラレベルの調整は'''含まれません'''(画像が解析単位より小さいからです)
; 詳細レベルのコントラスト、色度、或いは色相の目標/保護を使う場合に必要なメモリー
 
: <code>levels*width*height*3 + width*height*7</code>
 この制約を認識しておく手立てとして、効果を表示できる最大の番手のレベルをコントラストモジュールの最後のスライダーの後に表示してあります。上記の例2、3で言えば、“プレビューでの最大表示レベル7”というように。
: K10D: 329MiB
: D810: 1172MiB
; 更に色ずれの回避を使った場合のメモリー量
: <code>width*height*4</code>
: K10D: 39MiB
: D810: 138MiB
; トータル
: K10D: 483MiB
: D810: 1724MiB


== ウェーブレットのレベルの表示 ==
== ウェーブレットのレベルの表示 ==

Revision as of 23:01, 25 July 2020

ウェーブレットのレベル
ウェーブレットのレベルを使って行った処理、下半分が処理前、上半分が処理後の画像

この機能の構成

 ウェーブレット機能は広範囲にわたっていて、その基礎になっているアルゴリズムも複雑です。しかし、補間或いはカラーマネジメントと言った一定の役割を除けば、デジタル写真の処理に必要な機能の殆どを備えています。最も有益な点は、RawTherapeeの他の機能を使って行った処理の完成度を高め、微妙な処理を施すことが出来ることです。分解された画像の各レベルで調整が行えるので、全体的な細部を変えることなく、微妙なコントラストや色の効果の調整、ノイズ除去や不良部分の補正、或いはアーティファクトを発生させずに画像の輝度や色を調整することが可能です。

 この機能はどのジャンルの画像にも利用できますが、特に、微細な部分で選択的な調整が必要な、ポートレート、マクロ写真、天体写真の処理に適しています。もちろん、風景写真に関しても、青空特有のノイズを除去、細部を損なわずにダイナミックレンジを圧縮、シャドウ部分のノイズを軽減、色被りを除去、輝度に特殊な効果を付ける、などを行うことが出来ます。このように処理の可能性は殆ど無限ですが、そのためには貴方がこの機能の原理と操作を十分理解し、適切に処理することが肝要です。

 この機能は、最初に全般的なウェーブレットの設定モジュール、その後に有効・無効を切り替えて使う特定作業のモジュールという形で構成されています。

ウェーブレットとは?

 ウェーブレット、もっと特定的に言えば、ウェーブレット変換は30数年前にJean MorletとAlex Grossmanによって開発された関数です。フーリエ変換にかなり近いものですが、標準的なフーリエ変換が画像を全体の周波数で解析するのに対し、ウェーブレット変換は画像をピクセルレベルの周波数で解析するので、精度は高くなります。そのマザー関数に導かれたウェーブレット変換で画像を異なる大きさのディテールで分けた複数のレベルに分解し、それらレベルを個々に調整することが出来ます。その数学的な原理は、Stéphane Mallatによって開発されました。

 RawTherapeeは内包している色々な機能で、ウェーブレット変換を使っていますが、特にこの“ウェーブレットのレベル”ではそのマザー関数にドブシー関数を使っています。作業色空間にL*a*b*を使って、画像を各要素、L*、a*、b*に分解します。

ドブシー関数のレンダリング概念図

 画像の分解は、ピクセルの集合体(1番目のレベルは2x2=4ピクセル、2番目のレベルは4x4=16ピクセル。。。)のコントラストを3つの方向、垂直、水平、斜めで解析するアルゴリズムを使って行われます。そして、これらコントラスト値の解析結果は異なる振幅と強度値を持つウェーブレットの組み合わせに変換され、係数行列と言う形で保持されます。ウェーブレットで分解した画像を再生する際に、元画像に限りなく近い形にするためです。

 実際は、分解が行われた時点で元画像の存在は無くなり、係数行列(各レベルに1つの)だけが、その後の編集処理に使われます。これら係数行列は以下2通りの方法で画像を特徴付けるために使うことが出来ます:

  1. ディテールの大きさで分かれた複数のレベル:1番目のレベル1は画像を2x2ピクセルの単位で解析したものです、エキストラと呼ぶ10番目のレベルは1024x1024ピクセルの単位で解析したものです。従って、レベルの番手が上がると、処理時間やメモリーの使用量が増加します。各レベルを色相や輝度の“変化量”という係数で解析するため、レベルの画像の輝度と色が完全に均一であれば、そのレベルから得られる解析データはありません。この場合、各レベルの違いは、デジタルノイズ、エッジ効果によるコントラスト(或いは色度)、霞やその他の光学現象に由来するものだけになります。
  2. 残差画像:各レベルのデータを合算し、元画像のデータからその合算値を引いた画像です。データ処理の点から言えば、この残差画像も元画像と同じ性質を持っていますが、各レベルに保持されているようなディテールはありません。どのレベルで調整(コントラストや色度など)を行っても残差画像に影響しません(逆もまた然りです)。

 更に、各レベルで係数の組み合わせが解析され、その平均値(各レベルで計算されるのでそれぞれ異なった値になります)及び標準偏差が算出されます。これらに係数の最小値と最大値を加えることで、各レベルのコントラスト特性が得られます(これら特性はガウス分布ではありません)。以上全てがこの機能の様々なアルゴリズムで使われます。

実践

 画像を分解した後、これら画像を様々な目的で使うことが出来ます:画像の圧縮、ノイズ低減処理、シークレット透かし、天体撮影の特殊な残差画像の処理など。

 目的に応じて、単独または複数のレベル、残差画像、或いは、両方の組み合わせで、調整が可能です。

各レベルのディテールの実際の大きさ
1 (最も小さい) : 2x2ピクセル
2  : 4x4ピクセル
3  : 8x8ピクセル
4  : 16x16ピクセル
5  : 32x32ピクセル
6  : 64x64ピクセル
7  : 128x128ピクセル
8  : 256x256ピクセル
9 (最も大きい) : 512x512ピクセル
エキストラ  : 1024x1024ピクセル

 分解するレベルの総数が4或いは5、などと少ない場合は、画像の解析単位も最大16x16ピクセル或いは32x32ピクセルに留まります。元画像から引かれるレベルのデータが多くないため、残差画像の映りは元画像と比較的似ていますが、画像編集に役立つ特性は大きくありません。一方、レベルの総数を9やエキストラに設定すると、解析単位が最大512x512ピクセル、1024x1024ピクセルになります。残差画像は著しく変化し、ぼかした背景の様な映りになりますが、この残差画像が編集にとって重要な役割を果たします。

 ウェーブレット変換による分解で、画像は明度(L*)と補色次元(a*とb*)に分解された複数のレベルと一つの残差画像になります。これにより各レベルに対して異なる明るさと色調の調整、そしてそれらとは完全に異なる処理を残差画像に施すことが可能となります。つまり、レベルの画像と残差画像はそれぞれ独立していて、調整の影響を受けるレベルは変更を加えたレベルだけです。残差画像は独立しているので、各レベルの調整に関わらずそれらの影響を受けません。

 注意:“ウェーブレットのレベル”と“CIE色の見えモデル02”の機能を併用すると、アーティファクトが発生するかもしれません。これはCIECAMの色空間が、L*a*b*色空間に近いとは言え、異なるからです。コードが異なるのでアーティファクトの発生は物理的に避けられませんが、発生するかどうかは調整次第です。

プレビュー

 スクリーン上の画像の大きさは、画像のシャープネスや様々な機能の調整による小さな変化に直接的に影響します:それら変化は画像を100%(或いはそれ以上)に拡大して初めてわかります。

 これは実際には処理速度の制限(プレビューエリアの制限を参照)から最終画像のサイズを意識しておく必要があると言う意味です。最終的に画像サイズを縮小する(切り抜きではなく、リサイズのことです)予定であれば、ウェーブレットによる調整を行う前にリサイズしておくことを奨めます。そうでないとプレビューで見る画像と最終的に書き出した画像の映りが違う場合があることを覚えておいて下さい。

 もう一つ別な制約があります:RawTherapeeはプレビューに表示できる全てのレベルを使いますが、貴方がスクリーンで見る画像の部分より大きいディテールを持つレベルは無視します。但し、無視されたレベルに施された調整は画像が保存される際に反映されます:

  •  例1:画像の大きさが4096x2160ピクセルで、それを100%以上の拡大率で見た時、プレビュー画面で最終画像の大きさに似た1500x1200ピクセルで見ることが出来る場合。これは理想的な環境です。全てのレベル(最大のエキストラレベルまで)で行った調整が確認できるからです。加えて、どのレベルでも確認出来た調整効果は最終画像に反映されます。
  •  例2:画像の大きさは4096x2160ピクセルですが、100%以上の拡大率で見る際のプレビュー画面の画像の大きさが300x200ピクセルの場合。上記と異なり、番手が7(128x128ピクセル)より大きいレベルに加えられた調整効果をプレビューで確認出来ません。確認は出来ませんが、それら調整効果は画像を保存する際には反映されています(元画像の大きさが1024x1024ピクセルより大きいからです)。
  •  例3:画像の大きさが720x480ピクセルで、それを拡大して300x200ピクセルのプレビューで見る場合。番手が7(128x128ピクセル)より大きいレベルに加えられた調整効果をプレビューで確認出来ません。画像を保存する際に、番手8(256x256ピクセル)の調整は反映されますが、番手9及びエキストラレベルの調整は含まれません(画像が解析単位より小さいからです)

 この制約を認識しておく手立てとして、効果を表示できる最大の番手のレベルをコントラストモジュールの最後のスライダーの後に表示してあります。上記の例2、3で言えば、“プレビューでの最大表示レベル7”というように。

ウェーブレットのレベルの表示

 このパネルにはコンボボックスのメニューが3つあり、メインプレビューで何を見るか区別出来ます。この選択があることで、ウェーブレット変換がどのように働くか理解する助けになると思います。メニューの変更で変わるのはプレビューだけであり、処理画像には影響しません。

 初めのコンボボックスでプレビューの表示を選びます:

  1. ウェーブレットのレベルを一つだけ表示
  2. そのレベル、或いはそれ以下のレベルを表示
  3. その上のレベルと残差画像を表示
  4. 全てのレベルと方向を表示

 2番目のコンボボックスは、レベル“0”~“8”の中から、上記の選択で使う参考レベルを特定します。

 3番目のコンボボックスは、先のプレビューオプションの最初の3つの選択に関し、ウェーブレットの方向を決めます。

  1. 垂直
  2. 水平
  3. 対角線
  4. 全て

 例えば、“ウェーブレットのレベルを一つだけ表示”を選択し、調整したいウェーブレットのレベルを探し(例、肌のキメは調整しないが、シミなどは消したいというレベル)、目標に適しているかどうかを確認します。

 別な例として、“そのレベル以上+残差画像”と“レベル8”を選び、残差画像をチェックし、後述する“残差画像”で説明されている調整を施して効果を見極めます。

コントラスト

コントラストのレベル

 デフォルトの設定はレベル7です。前述のレベルの総数を決めるスライダーを使って数字を増やすことも減らすことも可能です。

 備考:レベル数を下げると、RAMの使用量と処理時間が減りますが、その場合、取り除かれるディテールが少ないので、残差画像は元画像と近いものになります。

 “コントラスト+”や“コントラスト-”のボタンを使えば、各コントラストレベルの効果を漸増(減)させることが簡単に行えます。つまり、このボタン操作では、細かいレベル程増減が大きく、高いレベル程増減が小さくなります。しかし、高いレベルだけを更に調整したい場合もあるでしょう、例えば、細かいレベルのコントラストを増やす一方で、高いレベルでは逆にコントラストを下げたいような場合です。

 各コントラストレベルは、詳細レベルのスケールに準じています。但し、コントラストスライダーによる効果は、調整を行う前にそのレベルにコントラストが存在していた場合だけです。仮にその部分が均一であった場合は、そのスライダーの効果はありません。

各レベルは以下の通りです:

  1. レベル 0: 2x2 ピクセル
  2. レベル 1: 4x4 ピクセル
  3. レベル 2: 8x8 ピクセル
  4. レベル 3: 16x16 ピクセル
  5. レベル 4: 32x32 ピクセル
  6. レベル 5: 64x64 ピクセル
  7. レベル 6: 128x128 ピクセル
  8. レベル 7: 256x256 ピクセル
  9. レベル 8: 512x512 ピクセル
  10. エキストラ: 1024x1024 ピクセル

 前述の“詳細レベルの総数”で説明したように、効果を目で確認するためには、プレビュー画像の大きさが、目的の詳細レベルの大きさと同等、或いはそれ以上必要であることを覚えておいて下さい。

 残差画像は詳細レベルの画像とは違いますので、上記の一覧の中にはありません。残差画像は、元画像から各詳細レベルのディテールが取り除かれた画像のことです。

 コントラストレベルの調整に特段変わったものはありません。直接的な調整です。強いて挙げるなら、ハイライトやシャドウ部分だけに適用、というような限定使用です。以下に説明する色度に関しても同じです。

適用

 このモジュールは、スライダーの効果を輝度の範囲で限定させるものです。例えば、輝度の高い部分だけ細部のコントラストを変えるとか、輝度の低い部分だけは、粗い部分のコントラストを下げる、というような設定です。

全輝度範囲

 “全輝度範囲”を選ぶと、ハイライト、中間、シャドウといった輝度に関わらず、各スライダーが同じ作用をします。

シャドウ/ハイライト

 “シャドウ/ハイライト”を選ぶと、目標とする部分の調整を行うため、新たなスライダーが表示されます:

  • シャドウの輝度範囲
  • 暗くする効果を何処までのレベルに与えるか設定します。貴方が使っているレベルが0以上であっても、設定は常に“レベル0”から数えた数字で行います。
  • ハイライトの輝度範囲
  • 明るくする効果を何処までのレベルに与えるか設定します。貴方が使っているレベルが8以下であっても、設定は常に“レベル8”から数えた数字で行います。

 例えば、貴方が詳細レベルの数を7にしていたとします。この場合、使用する最も高い詳細レベルは“レベル6”です(0から数えるため)。ここで、貴方が“レベル6”だけ暗くする効果を与え、レベル0と1には明るくする効果を与えたいと、考えたとします。その場合は、シャドウレベルのスライダーを3に、ハイライトレベルのスライダーを2にします。

 これら2つのアジャスターにより設定された以外のレベルに対する調整は、輝度の範囲全体に均等に働きます。

色度

 このモジュールの構成はコントラストのモジュールと似ています。3つの選択肢があります:

  1. 全色度:各詳細レベルで、そのコントラストレベルと関係なく、全ての色度が影響を受けます。
  2. 明清色(パステルカラー)/純色:コントラストレベルに関係なく、色度を明清色と純色に分けた2つの範囲で調整出来ます。
  3. コントラストレベルにリンクさせる:色度の調整がコントラストにも直接的に影響します。

全ての色度

 “全色度”を選ぶと、色度の強弱に関係なく、その詳細レベルの全色度が調整の影響を受けます。

 色度は(a*の二乗 + b*の二乗)の平方根で求められますが、計算値の範囲が広いため、プログラムの動作・効率を考え、敢えてその範囲を0~140に限定しました。それでも全てのケースに十分対応できます。

色度のカーブ:

  • X軸は詳細レベルを表しています。左端が最も細かいレベル、右端が最も粗いレベルです。つまり、X軸の数字は連続していません、不連続です。垂直に表示されているのは、X軸の値に合わせた9つの参考ポイントです。もし、貴方が9以下の詳細レベル数、例えば7を使っていたとすると、右2つのポイントは無視されます。
  • Y軸は各レベルの効力を示しています。カーブが中心線より上にある場合、影響を受ける詳細レベルの色度が増加します。下であれば、その逆です。

 コントラストの場合と同様、特定のレベルの色度の調整は、調整前にその詳細レベルに色度の違いが存在する場合だけです。仮にそのレベルの部分の色度が均一であれば、調整の効果はありません。

明清色(パステルカラー)/純色

 色度は次の3つの方法で調整出来ます:

  1. 全色度‐色度の強弱に関係なく、色度全体で均等に作用します(Y軸)
  2. 明清色/純色‐明清色/純色のしきい値に応じて色度の範囲を限定します。デフォルトの設定は5になっていますので、純色トーンの調整は最初の5レベルまでに限定され、明清色トーンの調整はその他のレベルに限定されます。
  3. コントラストレベルとリンク‐元画像の色度の範囲で、色度の調整がコントラストレベルの調整に比例します。この比例配分は“クロマリンク”のスライダーで調整します:0は色度に影響しません。100で最大効果となります。

トーンの分離

 これは“部分的なカラーシフト(トーン)”を可能にする機能ですが、機能名称は改めた方がいいかもしれません。

 ウェーブレット変換により、色データがa*とb*に分解されてしまっているので、各レベルの色相を直接的に調整することは出来ません。また、特定の色相と分解された色チャンネルを数学的に関連付けて正確に対応させることも殆ど不可能です。

 しかし、敢えて先の色度のカーブと同じ原理で2つのカーブを用意しました。X軸は0~8のレベルを不連続で表し、Y軸は中心線より上が効果を高めるポジション、下が効果を弱めるポジションです:

  • a*カーブはレッド/グリーンのトーンに影響します。
  • b*カーブはブルー/イエローのトーンに影響します。

 備考:a*とb*で全く同じ調整を行うと、最終的な効果は色度のカーブによる調整と同じになります。

エッジのシャープ化

 これは、RawTherapeeに既に備わっている、アンシャープマスクやRLデコンボリューション、エッジなどのシャープ化機能に追加的に設けられた機能です。原理はウェーブレット変換による画像の分解をベースにしています。ウェーブレット変換はマスクと似ているとも言える残差画像を生成するので、アンシャープマスクと効果が多少似ていると思われるかもしれません。しかし、似ているのはその点までです。RawTherapeeが使っているウェーブレット変換のドブシー関数は、各レベルの詳細を解析し、直接的に輪郭を認識するように働いているからです。最初のレベル0では、“半径”約2ピクセルのディテールに対し、2ピクセル毎の解析を行い、次のレベルでは4ピクセルの“半径”を解析する、といった具合です。

ここはまだ編集中です

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色域の抑制

青空のアーティファクトを軽減

 青空のような対象を撮影した場合、デジタル画像では、しばしばまだら模様のノイズが発生します。ウェーブレット変換は、細部のコントラストを増やすことに使えますが、この特性が小さなアーティファクトを発生させたり、増幅したりすることがあります。このチェックボックスを有効にすれば、メディアンフィルターを使って、その様なアーティファクトを軽減します。

 ツールチェーンパイプラインの上流に位置する、類似した効果を持つノイズ低減機能の利用もお忘れなく。

色相の目標/保護

 この機能はウェーブレット変換によるコントラスト調整と色度調整にリンクしています。カラートーンは影響を受けません。スライダーを左に動かすと、効果は特定の色相範囲に留まり、右に動かすと広い色相範囲に効果が現れます。

 スライダーの下にあるしきい値セレクターで、特定の色相を目標(或いは、保護)に選びます。デフォルトでは、肌色の色相が設定されています。選択範囲はL*a*b*色空間の中です。

色ずれを回避

 作業色空間を考慮し、レンダリングインテントに合わせるため、再変換した画像の色や輝度に適用します。

残差画像

 説明に入る前に残差画像のポイントを思い出して下さい:

  • ここはまだ編集中です
  • 残差画像とは、元画像から詳細レベルに分解した画像データの合計を引いたものです(個々の詳細レベルで行った調整は残差画像には影響しません)。
  • より多くの詳細レベルに分解されるほど、残差画像は元画像と違った映りになります。

 残差画像の調整は、ウェーブレット変換を使う処理の中で特筆すべき効用の一つです。これにより:

  1. ディテールのシャドウとハイライトを別々に調整出来ます。
  2. コントラスト(及び、色度)を減らすことで、マイクロコントラストの仕上がりが向上します。
  3. 詳細レベルの過剰な作用に起因するアーティファクトの発生を抑えるために、色度を変えることが出来ます。
  4. など

残差画像のシャドウ/ハイライト

 シャドウとハイライトのスライダーを右に動かすと、これら部分の輝度が増え、左に動かすと減ります。この作用は、露光補正タブの中にある“シャドウ/ハイライト”機能に似ていますが、ハイライト復元の作用に影響はありません。

 これらスライダーの作用は、次の2つのしきい値スライダーに影響を受けます:

  1. シャドウしきい値:デフォルトではL*スケール(0~100)が30に設定されており、30或いはそれ以下の輝度部分がシャドウスライダーの影響を受けます。
  2. ハイライトしきい値:デフォルトではL*スケール(0~100)が70に設定されており、70或いはそれ以上の輝度部分がハイライトスライダーの影響を受けます。

 どのしきい値を使うのが適当かどうかは、ナビゲーターパネルのL*値を参考にして判断します。

 シャドウ/ハイライトのアジャスターは次の様なケースで使えます:

  1. 明るい部分を対象に、輝きを増やす
  2. ハイライト部分で白飛びを避ける
  3. シャドウ部分を対象に、明るさを増やす
  4. など

残差画像のコントラスト

 これはウェーブレット変換を使う調整の中で特筆すべき効用の一つです。特徴のない残差画像(残差画像はディテールが取り除かれていることを思い出して下さい)のコントラストを変えることが出来るのです。その一方で、詳細レベルのコントラストは別途調整が出来るのです。例えば、残差画像のコントラストを適度に減らし、その分詳細レベルのコントラストを強くすることで、画像に深みと柔らか味を加えることが出来ます。

残差画像の色度

 上記のコントラストと同じ原理が色度のスライダーでも使えますが、色相スライダーと色相の目標/保護スライダーの併用による、選択的な色の調整が可能なだけではありません。デフォルトでは、典型的な青空の色相が設定されていますが、例えば、花の色や肌の色など好みの色を調整出来ます。色相の目標/保護スライダーで、特定した色相範囲で色度に変化を加えられます:

  1. スライダーを左に動かすと、色度の変更に対し、特定した色相だけが影響を受けます。例えば、緑草の色相を選択し、色度のスライダーを増やし、色相の目標/保護スライダーを左に動かすと残差画像の中の緑草の色度だけが増えます。
  2. スライダーを右に動かすと、色度の変更が色相セレクターで選んだ以外の色相全てに影響します。従って、上記と同じ例を使うと、色相の目標/保護スライダーを右に動かすことで、緑草の色相以外の色度が増えるのです。

 この調整機能は、肌色の彩度が不自然に強まること(例えば、人参色)を避けるのに大変有効です。