Noise Reduction/jp: Difference between revisions

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</div>


== インターフェイスの説明 ==
== インターフェイス ==
=== 方式 ===
=== 全般 ===
 ノイズ低減機能はRGB色空間でも、Lab色空間でも使えます。Lab空間で使えば、輝度と色を切り離して扱うことが出来るという有利性はありますが、輝度ノイズだけの補正(“''輝度''”と“''輝度 細部の復元''”のスライダー)であれば、通常、色空間の違いによる効果の差は無視できる程度です。色ノイズ低減(“''色(マスター)''”のスライダー)を強く使った場合は、違いが出るでしょう。
 RGBとLabモードを切り替える時は、細部がしっかりした彩度の高い大きな部分、例えばTシャツの色模様や花びらなど、を注意深く確認してみて下さい。


 RGBとLabモードを切り替える時は、細部がしっかりした彩度の高い大きな部分、例えばTシャツの色模様や花びらなど、を注意深く確認してみて下さい。
 以下の画像は様々な種類のノイズ低減機能によって得られる効果を例示したものです、違いを見せるため強く調整しています。元画像に(非常に低い)低周波ノイズはありませんが、機能の効果(及びその副作用)を明確に見せるため、敢えて低周波ノイズのない画像を使っています。


<gallery caption="ノイズ低減の方式の比較" perrow="4"| style="text-align: center">
<div align="center">
Image:Rt noisereduction 1 off-vs-rgb.jpg|ノイズ低減無効と有効 (RGBモード)
<gallery caption="ノイズ低減効果の比較‐色空間ごと" mode=nolines widths=600px heights=450px>
Image:Rt noisereduction 2 rgb-vs-lab.jpg|RGB対Lab
File:Noise-handkerchief-1-off.png|ノイズの多い画像、効果の程を見せるため、意図的に細部の復元は0、色度を高く設定
Image:Rt noisereduction 3 lmmse off-vs-rgb.jpg|ノイズ低減無効と有効 (RGBモード)
File:Noise-handkerchief-2-luminance-lab-conservative.png|L*a*b*色空間における輝度ノイズ低減の効果‐控えめな適用
Image:Rt noisereduction 4 lmmse rgb-vs-lab.jpg|RGB対Lab
File:Noise-handkerchief-3-luminance-lab-aggressive.png|L*a*b*色空間における輝度ノイズ低減の効果‐積極的な適用
File:Noise-handkerchief-4-luminance-rgb-conservative.png|RGB色空間における輝度ノイズ低減の効果‐控えめな適用
File:Noise-handkerchief-5-luminance-rgb-aggressive.png|RGB色空間における輝度ノイズ低減の効果‐積極的な適用
File:Noise-handkerchief-6-chrominance-lab-conservative.png|L*a*b*色空間における色ノイズ低減の効果‐控えめな適用
File:Noise-handkerchief-7-chrominance-lab-aggressive.png|L*a*b*色空間における色ノイズ低減の効果‐積極的な適用、一つの色相が別な色相と隣接している部分で、色が異なる色の部分に染み出していることが分かる‐例えば、ネイビーブルーがシアンに、グリーンが濁ったレッドに、濁ったレッドが深紅色に染み出している
File:Noise-handkerchief-8-chrominance-rgb-conservative.png|RGB色空間における色ノイズ低減の効果‐控えめな適用
File:Noise-handkerchief-9-chrominance-rgb-aggressive.png|RGB色空間における色ノイズ低減の効果‐積極的な適用、低周波の詳細が失われている
</gallery>
</gallery>
</div>


=== ノイズ低減の質 ===
=== 色空間 ===
 “高い”はノイズ低減の行程を、異なるアルゴリズムで2回行います。その代わり処理時間が増えます。
 ノイズ低減機能はL*a*b*色空間、RGB色空間のどちらでも使えます。
 “環境設定→パフォーマンスとクォリティ”でウェーブレット変換のレベルを変えられます。
*レベルは上げない
*レベルを1或いは2にする。処理時間は増えますが、色ノイズ低減の質は向上します、特に“パケット”と呼ばれる醜い色ノイズを減らします。


=== 輝度パネル ===
 L*a*b*色空間で作業する場合、輝度に関してはL*チャンネルが、色に関しては、a*とb*チャンネルがノイズ低減に使われます。


==== 輝度ノイズの低減 ====
 作業色空間がRGBの場合、CIE XYZ色空間のYが輝度ノイズの低減に使われ、(X-Y)と(Y-Z)が色ノイズ低減に使われます。
 輝度ノイズ低減には2つの方法があります。スライダーかカーブのどちらかを使います。相互作用はしません。


==== 輝度スライダー ====
=== モード ===
 このスライダーで、輝度ノイズによる粗い部分を滑らかに調整します。
 一般的なノイズ低減には2つの“モード”が用意されていて、高周波ノイズだけを処理するか、低周波ノイズだけを処理するか選べます。低周波ノイズは 広い領域に見られる斑点で、高周波ノイズは反対に狭い領域で見られる小さな斑点です。


==== 輝度カーブ ====
# 控えめな適用‐非常に低い周波数のノイズ以外は全て軽減するモードで、色の詳細情報が積極的な適用モードより保たれますが、非常に大きな斑点は除去できません。通常使用のモードです。
[[File:Rt nr luminancecurve books.jpg|thumb|center|900px|輝度カーブで、明るい部分の詳細を維持したまま、暗い部分のノイズを除去した例]]
# 積極的な適用-非常に低い周波数のノイズも除去しますが、高い周波数のノイズ除去は更に強くなります。非常にノイズの多い画像だけに適用するモードです。
 このカーブでより正確な部分を目標にしてノイズ低減を行います、よってシャドウ部分の輝度ノイズに対し強いノイズ低減を施す一方でハイライト部分ではノイズ低減を行わないように調整出来ます。一般的にノイズはハイライト部分よりシャドウ部分に多いので、これは望ましい機能です。カーブとスライダーはそれぞれ単独で使います。同時には使えません。


==== 輝度 細部の復元 ====
=== ガンマ ===
 輝度ノイズの使用後、失われた細部を回復させるスライダーです。設定値を極端に大きくしない限り、ノイズを再発せずに、細部の構造だけを復元します。
 ガンマは諧調に応じてノイズ低減の強さを変えるスライダーです。ガンマの値を小さく取るとシャドウ部分でのノイズ低減作用が強まり、高く取ると明るい部分だけにノイズ低減が作用します。


=== 色パネル ===
=== 輝度ノイズ ===
[[File:Rt nr luminancecurve books.jpg|thumb|600px|RawTherapee‐4.1で、カーブを使って輝度ノイズを軽減した例。暗い部分の輝度ノイズは完全に除かれた。一方明るい部分は詳細が完全に保たれている。]]


 “輝度ノイズの調整法”で、輝度ノイズの低減をスライダーで行うか、カーブで行うか選びます。
 “輝度”スライダーによる調整は、カーブの振幅を調整することと同じです‐両方ともノイズ低減の効果の強弱に関わります。但し、カーブによる調整には、ピクセルの輝度に応じた調整という、スライダーにない利点があります‐例えば、シャドウ部分の輝度ノイズ低減を強くして、ハイライト部分では作用しないようにすることです。
 “輝度 細部の復元”スライダーは、ノイズを再び増幅させることなく、画像の詳細を回復させる機能ですが、設定値が高すぎるとその限りではありません。
=== 色ノイズ ===
==== 方式 ====
==== 方式 ====
 選択出来る方式の種類は、“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→ツールのモード”で選択されるモード次第で、3つ、或いは4つになります:
 色ノイズ低減の機能は3つ、或いは4つのモードから選んで使います。モードの選択は“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→ノイズ低減”で行います:
 
 ツールモード – 標準:
* 手動
* 自動(全体)
* プレビュー
 
 ツールモード – 高度:
* 手動
* 自動(全体)
* 自動(マルチゾーン)
* プレビュー(マルチゾーン)


===== ツールのモードで“標準”を選んだ場合の方式選択 =====
==== プレビュー画像のノイズ ====
*手動
  “プレビュー画像のノイズ”は、処理された画像の色ノイズの推定値を示しています。
*自動(分割方式)
*自動(プレビュー方式)


===== ツールのモードで“高度”を選んだ場合の方式選択 =====
* 平均値: 全色チャンネルで見た色ノイズの推定平均値
*手動
* 最大値: 全色チャンネルで見た色ノイズの推定最大値
*自動(分割方式)
*自動(多分割方式)
*自動(プレビュー多分割方式)


===== プレビューのノイズ =====
==== モード:手動 ====
 “プレビューのノイズ”は、“色ノイズ”低減処理後の、色ノイズの推定値を示す機能です。
 3つのスライダーと1つのカーブの調整が画像全体の色ノイズに作用します。調整を手動で行います。
*中間色度:全色チャンネルの色ノイズを合計し、そこから算出した平均値です。
*高色度:全色チャンネルの中から推定される最大の色ノイズ値です。


===== 手動 =====
==== マスター ====
 3つのスライダーと色ノイズ低減のカーブで、色ノイズを手動で除去します。画像全体に作用します。
 色ノイズ低減の強さを調整します。レッド‐グリーンとブルー‐イエローの設定値に対し独立的なオフセットとして機能します。例えば、マスター=50、レッド‐グリーン=‐50、ブルー‐イエロー=‐50に設定されると、効果は0になります。


====== 色(マスター) ======
==== レッド‐グリーン ====
 ノイズ低減機能をカラーチャンネルに適用するスライダーです。この設定値が0~5の時は、色差スライダーの効果がありません。
 レッド‐グリーンチャンネル(L*a*b*色空間のa*チャンネル)の色ノイズを軽減/増幅します。


====== 色差(レッド/グリーン) ======
==== ブルー‐イエロー ====
 レッド/グリーンチャンネル(Labのa*)対する、色ノイズ低減の効果を高めたり低めたりします。
 ブルー‐イエローチャンネル(L*a*b*色空間のb*チャンネル)の色ノイズを軽減/増幅します。


====== 色差(ブルー/イエロー) ======
==== 色ノイズ低減カーブ ====
 ブルー/イエローチャンネル(Labのb*)対する、色ノイズ低減の効果を高めたり低めたりします。
 色ノイズの低減カーブは、ピクセルの色度に応じて色ノイズ低減の強さを調整する機能です‐例えば、色度の低い部分では強く、色度の高い部分では弱く、ノイズ低減の作用を調節出来ます。このカーブは“マスター”、“レッド‐グリーン”、“ブルー‐イエロー”スライダーによる作用を、スライダー値にカーブの縦座標値を乗算することで変化させます。例えば、マスタースライダーが30に設定されている時に、カーブの縦座標が中間の位置にあれば、効果の強さは45と同等になります。次のような場合に使用すると便利です。“自動(全体)”モードでグレーやくすんだ色の部分のノイズを軽減しようとすると、効果が弱過ぎることがしばしばあります。これはこのモードがノイズを平均的に処理するからです。グレーな部分では色ノイズが目立つので不快な印象が残りますが、色度の高い部分は同じ低減効果でも、ノイズが目立ち難いので許容できる印象となります。


===== 自動(分割方式) =====
==== 自動(全体) ====
*このノイズ低減アルゴリズムは画像全体に作用します。画像の中に任意のセルを9つ設け、各セルに対して:
 このアルゴリズムは画像を幾つかのセルに分割し、各セルに対して次の演算を行います:
**レッド/グリーンチャンネルとブルー/イエローチャンネルの色ノイズの平均を求めます。
**同じチャンネルで、色ノイズの最大値を求めます。


*画像にセルが9つ設けられない場合(画像サイズが小さ過ぎる)は、“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→セルのサイズ”で、セルのサイズを変更して下さい:
* レッド‐グリーンチャンネルとブルー‐イエローチャンネルのノイズの平均値
**最小は100x115、小は250x287、中はタイルの半分のサイズ(デフォルト設定)、最大はタイルと同サイズです。
* 上記チャンネルのノイズの最大値
**タイルはノイズ低減処理が行われる単位区分を指しますが、その数でRAMの使用量も変わります。タイル一枚のサイズは縦横約700ピクセルです。
**セルの大きさにはメリット・デメリットがあります:
***セルの大きさが小さければ、その分処理時間が短くなります。画像が均質であれば、小さいセルが使えます。
***逆に、セルが大きくなれば、処理時間は増えますが、より精度の高いノイズ低減処理が期待できます。


*セルの大きさだけでなく、ノイズ低減処理のレベルも変えることが出来ます。“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→ノイズ低減のレベル”で“標準”或いは“低”(デフォルト設定)を選べます。
==== プレビュー画像のノイズ ====
 このモードは画像が100%以上に拡大されている時にしか使えません。プレビュー画面に表示されている画像部分でノイズを解析し、ノイズ低減の演算を行います:


*処理のレベルを変えると、処理の比重が変わり3つのスライダー(マスター、レッド/グリーン、ブルー/イエロー)値も変わります。“プレビューのノイズ”で表示される値が更新されます。
* レッド‐グリーンチャンネルとブルー‐イエローチャンネルのノイズの平均値
* 上記チャンネルのノイズの最大値


*“プレビュー画面の画像”の映りが、TIFFやJPEG出力画像の映りに近くなるでしょう。
 表示されている画像を動かすと、マスター、レッド‐グリーン、ブルー‐イエロー、及び“プレビュー画像のノイズ”の値が更新されます。


*3つのスライダーの設定値は、プレビュー画面の画像が全体画像の何処を表示していても変わることはありません。
 従って、現在計算された値を維持したい場合は、モードを“手動”に切り替える必要があります。切り替えが行われないと、画像を動かした時、或いはプロファイルを他の画像にコピーする時に値が再計算されてしまいます。


*設定値はpp3ファイル(処理プロファイル)には保存されません。同じ設定値を他の画像に使うために保存するには、“手動”モードに切り替える必要があります。
==== 自動マルチゾーン ====
 この方式は環境設定でツールのモードを“高度”に設定しないと使えません。


===== プレビュー方式 =====
 これは画像全体が非常に大きい場合のノイズ低減に使います。
*このモードは、プレビューでの画像表示を100%、或いはそれ以上にしないと使えません。作用は画像全体に及びます。
*プレビューの拡大率を変えると、ノイズ低減の再計算が自動的に行われます。
*このモードはプレビューに表示されている画像部分だけを対象にノイズ低減のための計算を行います:レッド/グリーンチャンネルとブルー/イエローチャンネルで、ノイズの平均値と最大値を計算します。
*従って、プレビュー画像の移動で、異なる画像部分のノイズ低減が可能です。
*3つのスライダー、及び“プレビューのノイズ”はプレビュー画像の移動に合わせて更新されます。
*選択された画像で行われたノイズ低減設定は画像全体の処理に使われます。
*出力画像をTIFFやJPEG形式にする場合は、プレビュー画像の映りが出力画像と同じになります。
*“自動”モードの利用を奨めますが、選択した画像部分で行ったノイズ低減設定を他の画像に使いたい場合は、モードを一旦“手動”に変えれば処理プロファイルに保存することが出来ます。
*但し、環境設定で行った“ノイズ低減のレベル”が同一であることが条件です。


===== 自動(多分割方式) =====
 また、効果は保存画像だけに反映され、プレビュー画像を拡大しても確認出来ません。
*このモードが使える(環境設定で“ノイズ低減のレベル”を標準にすることが必要)のは、出力画像がTIFFとJPEG形式の場合だけです。
*このモードの効果は“プレビュー”画面で完全に反映させることは出来ませんが、以下に説明されている“プレビュー(多分割方式)を補助的に使い、画像の色々な部分をプレビューでチェックすれば、最終画像の仕上がりをかなり正確に推測出来るでしょう。
*“自動(多分割方式)”モードでは、ノイズ低減の区分にタイルを使いますので、その枚数に応じてメモリーの使用量が異なります。
*画像を縦横約500~800ピクセルのタイルで分割します。分割はプログラムが自動で行います。
*タイルの枚数は、画像のサイズと、“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→タイルの枚数”の設定で、12枚~120枚に決まります。
*タイルの設定時にタイルが重なり合う部分もありますが、隣接するタイルと違いがあっても心配には及びません。
*“環境設定→パフォーマンスとクオリティ”の設定に従ったタイルは、それぞれ個別にレッド/グリーン、ブルー/イエローチャンネルでノイズ低減が施されます。仮に、120枚のタイル全てを手動で処理するとしたら、それぞれマスター、レッド/グリーン、ブルー/イエローチャンネルで120回の異なる処理をすることになります。
*つまり、一枚のタイルを一つの画像として捉え、タイルの枚数と同じ回数の処理を行うということです。
*但し、“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→自動(多分割方式)のスムージング)”というオプションで、この処理を加減することが可能です。選択肢は4つあります:
**なし:上記で説明された処理が全て実行される。
**低:他のタイルで行われる処理の一部が軽減されますが、その度合いは非常に低いというモード
**高:“低”より、度合いが高いモード
**最高‐全てのタイルの平均値を適用する:このモードは、“自動(分割方式)の様に作用しますが、9つのセルの代わりに、12~120枚のタイルを使うところが違います。
*“環境設定→パフォーマンスとクオリティ”の設定全てがこのモードには関係します。


===== プレビュー(多分割方式) =====
 画像がタイルに分割されます。タイルは縦横約500~800ピクセルの大きさです。画像の大きさに応じて“環境設定→パフォーマンス&クオリティ→タイルの数”で12~120枚に設定します。各タイル別々に3つの値、レッド‐グリーン、ブルー‐イエローのノイズ、ノイズの最大値、が算出されるので、最大で120x3の固有値が得られます。隣接するタイルの値が大きく異なると、アーティファクトが発生し易くなります。その場合は、それらタイルの合わせ目をブレンドして滑らかにすることができます。環境設定→パフォーマンス&クオリティ→自動(多分割スムージング)で設定します:
*プレビューのモードと同じです。
*しかし、このモードはその“プレビューのノイズ”を補助的に使えば、“自動(多分割方式)の効果を非常に近い形で確認することが出来ます。
*“プレビューのノイズ:中間色度=xx 高色度=yy”という下に、2つのラインが表示されます:
**初めのラインは、タイルサイズのピクセル数と全画像の中心位置を表示しています。
**次のラインは、プレビューサイズのピクセル数と全画像の中心位置です。プレビューのサイズは、拡大率、ウィンドウの横幅で決まります。
**プレビュー画像を動かしたり、画像サイズを変えたりして、プレビューの中心位置とサイズをタイルに合わせて下さい。但し、ノイズ低減を実行中に、強い不連続性が発生することは非常に稀なので、数値がピッタリ合わなくとも十数ピクセルの違いであれば効果の確認に差は出ません。


===== 色ノイズ低減のカーブ =====
* なし: 各タイルの値が完全に独立した状態です
 このカーブで、より正確に特定部分のノイズ低減が行えます。
* 低: 隣接するタイルの処理の一部が多少考慮されます
*周知のように、L*a*b*モードの色度とは、色の強さを示す数値です。低色度はグレーや冴えない色であることを意味し、高色度は彩度の強い色を意味します。
* 高:  隣接するタイルの処理の一部がかなり考慮されます
*この色ノイズ低減のカーブは、“マスター、レッド/グリーン、ブルー/イエロー”のスライダーの効果をカーブが作る乗数で加減します。
* 最大: 全タイルの平均値が使われます。“自動(全体)”モードに似た作用をしますが、9個のセルの平均値の代わりにタイル(12~120枚)の平均値を使います。
*例えば、手動モードで、マスタースライダーが30にセットされている時に、カーブの高さが中間にあれば、マスタースライダーの効果は45と同じになります。
*このカーブは、色ノイズの調整方式(手動、自動(分割方式)、自動(多分割方式)、プレビュー方式)が何であっても使用が可能です。
*プログラムのデフォルト設定は、色ノイズの調整法が“自動(分割方式)”ですが、平均値で処理を行うため、色度の低い部分で効果が弱い場合があります。その様な場合、このカーブを使って効果を高めることが出来ます。色度の低い部分でノイズが目立つのはあまり嬉しくありませんが、彩度が強い部分では、ノイズのレベルが同じでも比較的目立ちません。
*備考:スライダー作用の補完として、メディアンフィルターの“色ノイズだけ”を使用することがあります。これは、ウェーブレット変換の値が高くなり過ぎること(画像が色褪せる印象)を避けるために使います。


=== ガンマ ===
==== プレビューマルチゾーン ====
 ガンマはノイズ低減が画像のどの色調で効果を高めるのか調整します。設定値が低い時 はシャドー部分の全ての色調で効果が高まります。高い設定値では、シャドー部分の 明るい部分だけで効果を高めます。
 この方式も環境設定でツールのモードを“高度”に設定しないと使えません。
 “プレビュー”モードと同じですが、“プレビュー画像のノイズ”で得られる情報を助けに“自動マルチゾーン”を使った場合の効果を推定できます(自動マルチゾーンモードはプレビューで画像を確認できないので)。
 
 “プレビュー画像のノイズ”の平均値=x、最大値=yの情報の下に表示される2行が以下の情報を提供します:
 
* 1行目はタイルサイズと(ピクセル)、元画像におけるタイルの位置を座標で表示します。
* 2行目はプレビュー画像のサイズと(ピクセル)、プレビュー画像の位置を座標で示します。
 
プレビュー画像の大きさは拡大率や表示ウィンドウの大きさで変化します。
タイルの中心位置やサイズはプレビュー画像を動かしたり、拡大率を変えたりして調整します。


=== メディアン ===
=== メディアン ===
[[File:Rt nr median books.jpg|900px|thumb|center|メディアンフィルター(3x3)を使ってアーティファクトを除去した例]]
[[File:Rt nr median books.jpg|600px|thumb|RawTherapee‐4.1のメディアンフィルター(3x3)を使ってアーティファクトを除去した例]]
 このフィルターは、上記のノイズ低減作用後に残った、小さく、はっきりしたアーティファクトを除去するのに使います。この[https://en.wikipedia.org/wiki/Median_filter メディアンフィルター](英語)、各ピクセルを周辺ピクセルのメディアン値に置き換えるものです。周辺ピクセルのパターンは“ウィンドウ”と呼ばれるもので、画像全体に渡りフィルターをピクセル単位でスライドさせます。ウィンドウのサイズは、“フィルターの種類”のドロップボックスから選びます。大きいサイズを選ぶと処理時間が長くなります。
[[File:Rt nr median zoom books.jpg|thumb|600px|thumb|メディアンフィルター使用(右)と未使用のノイズ低減効果の比較(画像拡大率200%)。フィルター使用の画像は未使用に比べシャープ感が劣るように見えるが、未使用の画像は詳細が少ない-これはノイズによりシャープ感があるように見えているだけ。同時に、フィルターを使用した画像を保存した場合(JPEG圧縮率92%、標準サブサンプリング)、未使用の画像よりサイズがほぼ40%小さくなる(350k対215k)。写真はRawTherapee-4.1による処理]]
 
 このフィルターでノイズ低減処理の後に残った小さく尖った形のアーティファクトを取り除きます。
 
==== メディアンの種類 ====
 [https://en.wikipedia.org/wiki/Median_filter メディアンフィルター] (英語)は隣接するピクセルの中間値を目標とするピクセルの値と置き換える働きをします。隣接するピクセルの集まりは”ウィンドウ”と呼ぶもので、このウィンドウがピクセルごとに画像全体をスライドしてアーティファクトを取り除いて行きます。ウィンドウのサイズは以下から選びます。サイズが大きいほど処理時間が長くなります。


使用出来るウィンドウのサイズは:
使用出来るウィンドウのサイズは:
* 3x3: 1ピクセル範囲で5ピクセルを処理
* 3x3ソフト: 1ピクセル範囲で5ピクセルを処理
: ○●○
: ○●○
: ●●●
: ●●●
: ○●○
: ○●○
* 強い3x3: 1ピクセル範囲で9ピクセルを処理
* 3x3: 1ピクセル範囲で9ピクセルを処理
: ●●●
: ●●●
: ●●●
: ●●●
: ●●●
: ●●●
* 5x5: 2ピクセル範囲で13ピクセルを処理
* 5x5ソフト: 2ピクセル範囲で13ピクセルを処理
: ○○●○○
: ○○●○○
: ○●●●○
: ○●●●○
Line 224: Line 217:
: ○●●●○
: ○●●●○
: ○○●○○
: ○○●○○
* 強い5x5: 2ピクセル範囲で25ピクセルを処理
* 5x5: 2ピクセル範囲で25ピクセルを処理
: ●●●●●
: ●●●●●
: ●●●●●
: ●●●●●
Line 251: Line 244:
 小さいウィンドウを使った機能の繰り返しの方が、大きいウィンドウを一回だけ使った時より、効果が高い場合もあります。
 小さいウィンドウを使った機能の繰り返しの方が、大きいウィンドウを一回だけ使った時より、効果が高い場合もあります。


 “輝度のみ”と“Lab”モードを使った場合、メディアンフィルターは、ノイズ低減行程の中のウェーブレット変換が行われた後に使われます。“RGB”モードの場合は、ノイズ低減の最終工程で使われます。
==== メディアンの方式 ====
 使用できる方式は5つあります:


[[File:Rt nr median zoom books.jpg|thumb|center|900px|メディアンフィルター使用(右)と未使用のノイズ低減効果の比較(画像拡大率200%)。フィルター使用の画像は未使用に比べシャープ感が劣るように見えるが、未使用の画像は詳細が少ない-これはノイズがシャープ感があるように見せかけているだけ。同時に、フィルターを使用した画像を保存した場合(JPEG圧縮率92%、標準サブサンプリング)、未使用の画像よりサイズがほぼ40%小さくなる(350k対215k)]]
*輝度ノイズだけ:作業色空間はL*a*b*ですが、L*チャンネルだけに作用します
 周辺ピクセルと値が大きく異なるピクセルを除去する以外に、このフィルター使用に何の意味があるのか疑問に思う人もいるでしょう。その効果の一つは、画像をJPEGやPNGに圧縮する際、ファイルサイズを減らせることです。メディアンフィルターは、画像データ圧縮の際にどのみち失われてしまうピクセルの値の差を除去します。また、これらの差は、画像を印刷した場合、恐らく見えないものです。これらの差を除去することで、ファイルサイズが40%減ることもあります(JPEG圧縮率を92に設定した“バランスの取れた質”[https://en.wikipedia.org/wiki/Chroma_subsampling クロマサブサンプリング](英語)でテストした結果)。試してみて下さい。
*色ノイズだけ:作業色空間はL*a*b*ですが、a*チャンネルとb*チャンネルだけに作用します
*L*(少ない)とa*とb*(普通)の加重平均:L*a*b*の全てのチャンネルに作用しますが、L*チャンネルに対しては弱めに作用します
*L*a*b*:全てのチャンネルに対し同じ強さで作用します
*RGB:作業色空間がRGBのモードです。このモードが使用できるウィンドウのサイズは3x3ソフト、3x3 、5x5に制限されます


 “色ノイズだけ”というメディアンフィルターは、ウェーブレット変換による処理を補完するために使えます。画像の詳細部分が色褪せないよう、処理に適用される変換値を下げます。
 “輝度のみ”と“Lab”モードを使った場合、メディアンフィルターは、ノイズ低減行程の中のウェーブレット変換が行われた後に使われます。“RGB”モードの場合は、ノイズ低減の最終工程で使われます。


==== 方式 ====
 メディアンフィルターの使用目的は、美的な理由から、隣接するピクセルに非常に乖離したものがある時、それを除去することにありますが、他の目的もあります。その一つは、画像をJPEGやPNGに圧縮して保存する際に画像ファイルのサイズを減らすことです。メディアンフィルターは、保存の際の画像圧縮で、どの道失われる小さな変異を予め取り除きます。これら小さな変異は印刷時には恐らく見えないものです。しかし、フィルターを使ってこれらを取り除いておけば、画像サイズを40%節約できる(JPEGの圧縮率を92、[https://en.wikipedia.org/wiki/Chroma_subsampli クロマサブサンプリング] (英語)を“バランス”に設定した画像でテスト済み)こともありますので、ファイルサイズが気になるユーザーは一度試してみて下さい。
 必要に応じて使い分けられるよう5つの方式を用意しました:
*輝度のみ:L*a*b*色空間を使いますが、作用するのは輝度(L)チャンネルに対してだけです。
 最後に、“色ノイズのみ”の方式は、自動で行われる色ノイズ低減の計算を補完する方式考えればいいでしょう。自動計算で得られた中の大きく外れた値を減らすことで、計算値を緩和し、詳細な色情報が失われ過ぎないようにします。
*色ノイズだけ:L*a*b*色空間を使いますが、作用するのはa*チャンネルとb*チャンネルに対してだけです。
*a*b*の比重は普通に、L*チャンネルの比重だけ少なくします。L*a*b*色空間を使います。
*L*a*b*:L*、a*、b*の3チャンネルで均等に作用します。 L*a*b*色空間を使います。
*GB:RGB色空間を使います。但し、使えるフィルターは3x3、強い3x3、5x5だけです。

Revision as of 01:31, 11 June 2018

ノイズ低減

このツールの効果は、画像の大きさが等倍、或いは、それ以上ないと見極めが困難です。詳細ウィンドウ(プレビュー画面の下のWindow-add.pngをクリック)で画像の一部を拡大するか、Magnifier-1to1.pngで画像全体を100%(1対1)に拡大して調整を行います。


イントロダクション

ノイズ低減機能の使用前と使用後の画像

 写真撮影は露光中にカメラの中の媒体に当たる光を記録することが出発点となります。典型的な媒体はフィルム或いはデジタルセンサーです。しかし、媒体が光から受けるシグナルと媒体が記録するシグナルは全く同じものではなく、その違いのためノイズが発生します。フィルム及びデジタル写真撮影はノイズ(フィルムの場合は“グレイン“と呼ばれます)の影響を受けますが、ノイズには特定の要因や媒体によって様々な種類があります。

 ノイズを効果的に軽減するために、どの様なノイズが存在するのか、またどの様な場合に発生するのかを知っておくことは有益です。ノイズに関しては、RawTherapeeの開発者の一人、エンリコ・フェルミ研究所の物理学教授、Emil J Martinec氏による詳細説明があります:Noise, Dynamic Range and Bit Depth in Digital SLRs

 光はフォトンと呼ばれるエネルギーの集まりで構成されています。一方、デジタルセンサーは何百万ものフォトサイト(センサーの要素という意味で、センセルともいいます)で構成されています。各フォトサイトはフォトンからの一定範囲の信号を記録することが出来ます‐それが非常に少ないとフォトサイトは何も記録しません、また、非常に多いと純白(完全な露出オーバー)に“クリップ(飽和)”します。バケツで雨水を集めることと似ています‐雨が降らなければバケツは空のままですが、豪雨になればバケツから水が溢れてしまいます。

 ここまでの説明で“ピクセル”という用語が出ていないことに留意して下さい‐複数のフォトサイトから送られてくる光の情報が、この後デモザイクと呼ばれる処理を通して一つのピクセルに統合されるのです。しかし、関連情報の中には、“フォトサイト”を“ピクセル”と書いているものがあります。

 イメージセンサーの物理的な感度は一定ですが、撮影者は記録された信号を増幅するように設定することが出来ます。ご存知ISOの設定です。前述したように、センサーに記録されるシグナルは完全なものではないので、高いISO値を設定すると目標とするシグナルだけでなく、ノイズも増幅されます。どのISO値であってもセンサーにはノイズの影響が出ますが、高いISO値ほどノイズが目立つようになります。

 ノイズの種類に応じてそれを処理する機能も異なります:

  •  ノイズ低減はフォトンのショットノイズ (ガウスノイズとポアソンノイズ)及びフィルムグレインを処理するのに最も有効な機能です。
  •  リードノイズとサーマルノイズに関してはダークフレームによる対応が最適です。
  •  ソルト&ペッパーノイズ(予想に反した黒や白のピクセルが現れる)には、ホット/バッドピクセルフィルターインパルスノイズ低減を使います。
  •  パターンノイズ(反復性、異方性)はラインノイズフィルターで処理するのが最適です。

 原因が何であるにせよ、ノイズは逸脱した色の斑点‐“色ノイズ”と、異なる明るさの斑点‐“輝度ノイズ”として現れます。

  1.  色ノイズはデジタル画像特有の産物で、一般的には醜いので、常に除去したいノイズです。
  2.  一方、輝度ノイズはフィルムグレインに似ているので、それが魅力的表現であるとする場合もあり、色ノイズの様に常に除去したいものではありません。

 ユーザーが求めるノイズ低減効果は、その人によって違います。完全なノイズ除去による、滑らかな画像が好きな人もいれば、フィルム調の質感を残したいと思う人もいます。RawTherapee のノイズ低減機能は、これらのニーズに応えるべく、画像の細部を保ちながらノイズを除去します。ウェーブレット変換フーリエ変換を駆使して調整しますが、どの様に仕上げるかは、貴方次第です。効果的な調整を行うための説明が以下にあります。

この機能の扱い方

 この項ではノイズを取り去る処理の詳細を順に説明します。

  1.  まず適用するデモザイクの方式が最適なものかどうか確認します。RawTherapeeを一般的な画像に使うのであれば、AMaZEの適用を奨めますが、ノイズが非常に多い高ISOの画像に関しては、LMMSE、或いはIGVの適用を奨めます。AMaZEでは小さいメイズ模様に似たアーティファクトが発生することがあるからです。LMMSEやIGVは、この問題を避けながら、画像の詳細を保つよう設計されています。
  2.  シャープ化機能で精巧な細部にシャープ化を施していないことを確認します、何故ならノイズの多い画像の細部は精巧に映ってないからです。ディテールレベルのコントラスト機能やウェーブレット機能を使っている場合は、ノイズを増幅させないため、最も詳細なレベルの、或いは次のレベルも含めて、スライダーの値を0にします。
  3.  編集画像を100%或いはそれ以上に拡大し、鋭く焦点の合っているところと、焦点の合っていない大きなところの両方を見ることの出来る画像部分を捜します。処理を行った際にノイズの軽減効果をその部分で確認するためです。
  4.  ソルト&ペッパーノイズ(黒、或いは白いピクセル)があれば、ホット/バッドピクセルフィルターを有効にします。
  5.  ノイズ低減機能を有効にします。色ノイズは自動で軽減されるので、通常、再調整の必要はありません。この時点で、画像にはフィルム写真のようなざらつき感だけが残っていると思います。ここまでの仕上がりで満足ならば、ノイズ低減処理は終了したことになりますが、更に調整が必要ならば以下に進んで下さい。
  6.  輝度ノイズを除去するために、輝度 細部の復元スライダーを0にセットしてから、ノイズが消えて画像が滑らかになるまで輝度スライダーを動かします。
  7.  輝度 細部の復元スライダーを使って細部の復元を行います。
  8.  ノイズ低減処理を行っても小さなアーティファクトが残っている場合があります。その場合は、メディアンフィルターを使って取り除きます。
  9.  一般的に、シャープ化機能とノイズ低減機能を併用することは奨めませんが、バージョン5.5以降のRawTherapeeにはシャープ化機能の中に“コントラストのしきい値”が備わっているので、均一な画質や滑らかな画質部分を保持しながら細部にシャープネスをかける調整が可能です。

インターフェイス

全般

 RGBとLabモードを切り替える時は、細部がしっかりした彩度の高い大きな部分、例えばTシャツの色模様や花びらなど、を注意深く確認してみて下さい。

 以下の画像は様々な種類のノイズ低減機能によって得られる効果を例示したものです、違いを見せるため強く調整しています。元画像に(非常に低い)低周波ノイズはありませんが、機能の効果(及びその副作用)を明確に見せるため、敢えて低周波ノイズのない画像を使っています。

色空間

 ノイズ低減機能はL*a*b*色空間、RGB色空間のどちらでも使えます。

 L*a*b*色空間で作業する場合、輝度に関してはL*チャンネルが、色に関しては、a*とb*チャンネルがノイズ低減に使われます。

 作業色空間がRGBの場合、CIE XYZ色空間のYが輝度ノイズの低減に使われ、(X-Y)と(Y-Z)が色ノイズ低減に使われます。

モード

 一般的なノイズ低減には2つの“モード”が用意されていて、高周波ノイズだけを処理するか、低周波ノイズだけを処理するか選べます。低周波ノイズは 広い領域に見られる斑点で、高周波ノイズは反対に狭い領域で見られる小さな斑点です。

  1.  控えめな適用‐非常に低い周波数のノイズ以外は全て軽減するモードで、色の詳細情報が積極的な適用モードより保たれますが、非常に大きな斑点は除去できません。通常使用のモードです。
  2. 積極的な適用-非常に低い周波数のノイズも除去しますが、高い周波数のノイズ除去は更に強くなります。非常にノイズの多い画像だけに適用するモードです。

ガンマ

 ガンマは諧調に応じてノイズ低減の強さを変えるスライダーです。ガンマの値を小さく取るとシャドウ部分でのノイズ低減作用が強まり、高く取ると明るい部分だけにノイズ低減が作用します。

輝度ノイズ

RawTherapee‐4.1で、カーブを使って輝度ノイズを軽減した例。暗い部分の輝度ノイズは完全に除かれた。一方明るい部分は詳細が完全に保たれている。

 “輝度ノイズの調整法”で、輝度ノイズの低減をスライダーで行うか、カーブで行うか選びます。

 “輝度”スライダーによる調整は、カーブの振幅を調整することと同じです‐両方ともノイズ低減の効果の強弱に関わります。但し、カーブによる調整には、ピクセルの輝度に応じた調整という、スライダーにない利点があります‐例えば、シャドウ部分の輝度ノイズ低減を強くして、ハイライト部分では作用しないようにすることです。

 “輝度 細部の復元”スライダーは、ノイズを再び増幅させることなく、画像の詳細を回復させる機能ですが、設定値が高すぎるとその限りではありません。

色ノイズ

方式

 色ノイズ低減の機能は3つ、或いは4つのモードから選んで使います。モードの選択は“環境設定→パフォーマンスとクオリティ→ノイズ低減”で行います:

 ツールモード – 標準:

  • 手動
  • 自動(全体)
  • プレビュー

 ツールモード – 高度:

  • 手動
  • 自動(全体)
  • 自動(マルチゾーン)
  • プレビュー(マルチゾーン)

プレビュー画像のノイズ

  “プレビュー画像のノイズ”は、処理された画像の色ノイズの推定値を示しています。

  • 平均値: 全色チャンネルで見た色ノイズの推定平均値
  • 最大値: 全色チャンネルで見た色ノイズの推定最大値

モード:手動

 3つのスライダーと1つのカーブの調整が画像全体の色ノイズに作用します。調整を手動で行います。

マスター

 色ノイズ低減の強さを調整します。レッド‐グリーンとブルー‐イエローの設定値に対し独立的なオフセットとして機能します。例えば、マスター=50、レッド‐グリーン=‐50、ブルー‐イエロー=‐50に設定されると、効果は0になります。

レッド‐グリーン

 レッド‐グリーンチャンネル(L*a*b*色空間のa*チャンネル)の色ノイズを軽減/増幅します。

ブルー‐イエロー

 ブルー‐イエローチャンネル(L*a*b*色空間のb*チャンネル)の色ノイズを軽減/増幅します。

色ノイズ低減カーブ

 色ノイズの低減カーブは、ピクセルの色度に応じて色ノイズ低減の強さを調整する機能です‐例えば、色度の低い部分では強く、色度の高い部分では弱く、ノイズ低減の作用を調節出来ます。このカーブは“マスター”、“レッド‐グリーン”、“ブルー‐イエロー”スライダーによる作用を、スライダー値にカーブの縦座標値を乗算することで変化させます。例えば、マスタースライダーが30に設定されている時に、カーブの縦座標が中間の位置にあれば、効果の強さは45と同等になります。次のような場合に使用すると便利です。“自動(全体)”モードでグレーやくすんだ色の部分のノイズを軽減しようとすると、効果が弱過ぎることがしばしばあります。これはこのモードがノイズを平均的に処理するからです。グレーな部分では色ノイズが目立つので不快な印象が残りますが、色度の高い部分は同じ低減効果でも、ノイズが目立ち難いので許容できる印象となります。

自動(全体)

 このアルゴリズムは画像を幾つかのセルに分割し、各セルに対して次の演算を行います:

  • レッド‐グリーンチャンネルとブルー‐イエローチャンネルのノイズの平均値
  • 上記チャンネルのノイズの最大値

プレビュー画像のノイズ

 このモードは画像が100%以上に拡大されている時にしか使えません。プレビュー画面に表示されている画像部分でノイズを解析し、ノイズ低減の演算を行います:

  • レッド‐グリーンチャンネルとブルー‐イエローチャンネルのノイズの平均値
  • 上記チャンネルのノイズの最大値

 表示されている画像を動かすと、マスター、レッド‐グリーン、ブルー‐イエロー、及び“プレビュー画像のノイズ”の値が更新されます。

 従って、現在計算された値を維持したい場合は、モードを“手動”に切り替える必要があります。切り替えが行われないと、画像を動かした時、或いはプロファイルを他の画像にコピーする時に値が再計算されてしまいます。

自動マルチゾーン

 この方式は環境設定でツールのモードを“高度”に設定しないと使えません。

 これは画像全体が非常に大きい場合のノイズ低減に使います。

 また、効果は保存画像だけに反映され、プレビュー画像を拡大しても確認出来ません。

 画像がタイルに分割されます。タイルは縦横約500~800ピクセルの大きさです。画像の大きさに応じて“環境設定→パフォーマンス&クオリティ→タイルの数”で12~120枚に設定します。各タイル別々に3つの値、レッド‐グリーン、ブルー‐イエローのノイズ、ノイズの最大値、が算出されるので、最大で120x3の固有値が得られます。隣接するタイルの値が大きく異なると、アーティファクトが発生し易くなります。その場合は、それらタイルの合わせ目をブレンドして滑らかにすることができます。環境設定→パフォーマンス&クオリティ→自動(多分割スムージング)で設定します:

  • なし: 各タイルの値が完全に独立した状態です
  • 低: 隣接するタイルの処理の一部が多少考慮されます
  • 高:  隣接するタイルの処理の一部がかなり考慮されます
  • 最大: 全タイルの平均値が使われます。“自動(全体)”モードに似た作用をしますが、9個のセルの平均値の代わりにタイル(12~120枚)の平均値を使います。

プレビューマルチゾーン

 この方式も環境設定でツールのモードを“高度”に設定しないと使えません。

 “プレビュー”モードと同じですが、“プレビュー画像のノイズ”で得られる情報を助けに“自動マルチゾーン”を使った場合の効果を推定できます(自動マルチゾーンモードはプレビューで画像を確認できないので)。

 “プレビュー画像のノイズ”の平均値=x、最大値=yの情報の下に表示される2行が以下の情報を提供します:

  • 1行目はタイルサイズと(ピクセル)、元画像におけるタイルの位置を座標で表示します。
  • 2行目はプレビュー画像のサイズと(ピクセル)、プレビュー画像の位置を座標で示します。

プレビュー画像の大きさは拡大率や表示ウィンドウの大きさで変化します。 タイルの中心位置やサイズはプレビュー画像を動かしたり、拡大率を変えたりして調整します。

メディアン

RawTherapee‐4.1のメディアンフィルター(3x3)を使ってアーティファクトを除去した例
メディアンフィルター使用(右)と未使用のノイズ低減効果の比較(画像拡大率200%)。フィルター使用の画像は未使用に比べシャープ感が劣るように見えるが、未使用の画像は詳細が少ない-これはノイズによりシャープ感があるように見えているだけ。同時に、フィルターを使用した画像を保存した場合(JPEG圧縮率92%、標準サブサンプリング)、未使用の画像よりサイズがほぼ40%小さくなる(350k対215k)。写真はRawTherapee-4.1による処理

 このフィルターでノイズ低減処理の後に残った小さく尖った形のアーティファクトを取り除きます。

メディアンの種類

 メディアンフィルター (英語)は隣接するピクセルの中間値を目標とするピクセルの値と置き換える働きをします。隣接するピクセルの集まりは”ウィンドウ”と呼ぶもので、このウィンドウがピクセルごとに画像全体をスライドしてアーティファクトを取り除いて行きます。ウィンドウのサイズは以下から選びます。サイズが大きいほど処理時間が長くなります。

使用出来るウィンドウのサイズは:

  • 3x3ソフト: 1ピクセル範囲で5ピクセルを処理
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○●○
  • 3x3: 1ピクセル範囲で9ピクセルを処理
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  • 5x5ソフト: 2ピクセル範囲で13ピクセルを処理
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○●●●○
○○●○○
  • 5x5: 2ピクセル範囲で25ピクセルを処理
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  • 7x7: 3ピクセル範囲で49ピクセルを処理
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  • 9x9: 4ピクセル範囲で81ピクセルを処理
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 小さいウィンドウを使った機能の繰り返しの方が、大きいウィンドウを一回だけ使った時より、効果が高い場合もあります。

メディアンの方式

 使用できる方式は5つあります:

  • 輝度ノイズだけ:作業色空間はL*a*b*ですが、L*チャンネルだけに作用します
  • 色ノイズだけ:作業色空間はL*a*b*ですが、a*チャンネルとb*チャンネルだけに作用します
  • L*(少ない)とa*とb*(普通)の加重平均:L*a*b*の全てのチャンネルに作用しますが、L*チャンネルに対しては弱めに作用します
  • L*a*b*:全てのチャンネルに対し同じ強さで作用します
  • RGB:作業色空間がRGBのモードです。このモードが使用できるウィンドウのサイズは3x3ソフト、3x3 、5x5に制限されます

 “輝度のみ”と“Lab”モードを使った場合、メディアンフィルターは、ノイズ低減行程の中のウェーブレット変換が行われた後に使われます。“RGB”モードの場合は、ノイズ低減の最終工程で使われます。

 メディアンフィルターの使用目的は、美的な理由から、隣接するピクセルに非常に乖離したものがある時、それを除去することにありますが、他の目的もあります。その一つは、画像をJPEGやPNGに圧縮して保存する際に画像ファイルのサイズを減らすことです。メディアンフィルターは、保存の際の画像圧縮で、どの道失われる小さな変異を予め取り除きます。これら小さな変異は印刷時には恐らく見えないものです。しかし、フィルターを使ってこれらを取り除いておけば、画像サイズを40%節約できる(JPEGの圧縮率を92、クロマサブサンプリング (英語)を“バランス”に設定した画像でテスト済み)こともありますので、ファイルサイズが気になるユーザーは一度試してみて下さい。

 最後に、“色ノイズのみ”の方式は、自動で行われる色ノイズ低減の計算を補完する方式考えればいいでしょう。自動計算で得られた中の大きく外れた値を減らすことで、計算値を緩和し、詳細な色情報が失われ過ぎないようにします。